カテゴリ:本( 269 )

『球形の荒野』、『点と線』松本清張

e0171821_10342349.jpgこの前、半藤一利の「清張さんと司馬さん」という編集者時代に担当した2大作家とのあれこれを綴った本を読んでいたら、数十年ぶりに松本清張の本が読みたくなりました。

ということで、まずは『球形の荒野』を…。
この話は、読んだというよりNHKでのドラマで覚えています。
Wikiを見ていただければ分かりますが、人気小説だけに映画化1回、TVで8回もドラマ化されている。

僕が覚えているのは1969年版のNHK水曜劇場。
野上久美子を山本陽子、そして野上顕一郎が森雅之
太平洋戦争終結のために外交官として赴任先の中立国で終戦工作のため、連合軍の諜報機関と関わり、スイスの病院で病死したことになっていた顕一郎という人物を演じるには森雅之の知的で彫りの深い顔立ちが際立っていました。
僕の父と成城学園で一緒だったので、父が肝煎りを努めていた成城学園OBによる絵画の展覧会にも出品してくれていました。本名の「有島」名義で出していましたけど…。

さて、本の方ですが「あらすじ」は分かっていたものの読み出すと、実に面白い。
1960年に「オール讀物」で連載開始なので、すでに戦後の混乱から抜け出して高度成長期に入り始めた時代。
僕も小学校高学年になっていた時代なので、漠然とですが当時の社会風俗などは分かります。
松本清張の本をきちんと読むのは初めてといって良いのですが、丹念な文章に感心しました。
登場してくる土地も馴染みのあるところばかりなので、地勢が目に浮かぶ。

京都のMホテル(都ホテルでしょう)でのピストル銃撃事件あたりから、話が急展開して最後はハッピーエンド。この最後の観音崎でのシーンは余韻がありますね。
上下2冊をあっという間に読んでしまった。

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点と線』は、社会派推理小説の先駆けとなった作品。
東京駅で13番線から15番線が見渡せるという「4分間の空白」があまりにも有名なトリック。

今回初めて知りましたが、この作品は交通公社(現JTB)が出していた「旅」という雑誌に連載していたのですね。
しかも当時の編集長が戸塚文子だったとは。

時刻表が効果的に登場したり、結核で鎌倉に療養中の安田の妻が時刻表を見ながら架空の「旅」をして愉しむなどということが、後に謎解きのキーになったりするんでしょうね。
人気作家になる前の松本清張が「旅」という媒体に合わせて書いたとも…。勘ぐりすぎかな?

こちらも、作品の展開にあたって舞台となる場所が周知のところばかり。
香椎海岸、赤坂、鎌倉など風間完の挿絵も時代を映して良い。

どちらの作品を読んでも、新幹線は無い時代のことだし、人々の移動も現在のように盛んでは無い時代のことだから、このような小説を読みながら旅をした気分になっていたのでしょうね。中流家庭以上には女中さんが普通にいた時代だったな…と読みながら想い出しました。
電話をかけるにも、すべて交換台を通してなんて時代ですから。

現在の日本からは想像もできないほど、ゆったりとした時間が流れる「古き良き日本」を感じさせてくれる小説でした。この物語に懐かしさを覚えるのは、我々の世代が最後でしょうね。


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by dairoku126 | 2018-10-18 11:49 | | Comments(0)

『闇の峠』諸田玲子

e0171821_12343105.jpg先週の土曜日あたりから急に寒くなって来ました。
この寒暖差は、堪えます。
布団も厚めの羽毛に変えました。

ということで、風邪気味だったのでカヌーは休んで読書をすることに…。諸田玲子の新しい文庫本が出ていたので、買っておいたのを読み始めました。
読み始めてみて「?」という疑問が。
これは以前に読んだ「風聞き草墓標」では…と思いながら途中まで読んでいたら、文庫化に際してタイトルを変えていたようで。

まぁ、前に読んだ時は謎に惹かれるあまり読み飛ばし気味に読んだので、今回はじっくりと読むことが出来たから良しとしよう。
じっくりと読んだ分だけ、細部の事柄がよく調べてあることに感心しました。

リンクを貼った新潮社のサイトにある「書評」というところに、この物語の謎の発端となる勘定奉行・萩原重秀のことを研究してきた金沢大学の村井教授のコメントを読むと、ヒロインは諸田玲子がかなり造形を施したようですが、実在の人物。
物語の方では、彼女が探偵役として大岡越前と情報を交換しながら事件の核心に迫る…という風になっています。

特に、江戸と佐渡を結ぶ謎解きの旅が面白い。
「出女に入鉄砲」と、当時の女性にとって旅することが困難なものであったかが良く描かれている。村井教授の書評にも書かれていましたが、実際に出雲崎、佐渡、江戸などを歩いて調査したようですね。文庫本には、単行本に無かった地図が巻頭についていた。

今年も秋が短く、すでに初冬のような陽気になってきたので、本を読む日々が増えるかな?
レースもあと二つ残っているのに…。

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by dairoku126 | 2018-10-16 13:02 | | Comments(0)

『蘇える鬼平犯科帳―池波正太郎と七人の作家』

e0171821_09583568.jpg池波正太郎が長谷川平蔵を主人公とした「浅草・御厩河岸」で「鬼平犯科帳」をスタートさせたのが1967年のこと。
2017年、「鬼平」誕生50周年を記念して7人の作家が新たな「鬼平」物語に挑んだ競作短編集です。

逢坂剛、諸田玲子、土橋章宏、上田秀人、門井慶喜、風野真知雄、梶よう子、そして池波本人がBest5に選んだ「瓶割り小僧」を収録という豪華な顔ぶれ。
書店で見かけて、「読むっきゃない」と手に取りました。

読んでみると、それぞれの作家の「色」が出ていて面白い。
みんな「鬼平」のファンなんでしょうね。
取り上げる題材や人物の選び方が「いかにも」という感じです。
作品の内容については、こちらを…。

個人的な好みからいうと、諸田玲子の「最後の女」、土橋章宏の「隠し味」、門井慶喜の「浅草・今戸橋」あたりが好きですね。
諸田玲子は「妖盗・葵小僧」の犠牲となった女性を主人公に葵小僧と鬼平の再対決。
事件を契機に、長谷川平蔵に焦がれる女心が切ない!

「超高速!参勤交代」の土橋章宏は料理人と鬼平の対決。良い雰囲気を出してます。
父譲りの味を巡って…というのが「隠し味」になった好篇です。

門井慶喜はタイトルから窺われるように池波の文章模写を徹底している。
しかも、狂言回し役に「うさぎ」こと木村忠伍!という念の入れよう。

あらためて「鬼平犯科帳」を再読してみようか…という気にさせてくれる短編集でした。

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by dairoku126 | 2018-10-11 10:37 | | Comments(0)

『不連続殺人事件』坂口安吾

e0171821_09303955.jpg名前は知っているし、気にはなっているけど、なかなか手に取らない作家というのが居る。僕にとっては、坂口安吾もその一人。

「教養」として読んでおかねばと思うものの、なぜか手が延びなかったんだけど、先日TSUTAYAに行ったら彼の書いた推理小説が新潮文庫から出ていたので、ついに手に取りました。

推理小説ファンだった坂口安吾が、既存の推理小説に飽き足らず、自分で書いてしまったという「不連続殺人事件」。
これは戦後の混乱期に日本小説という雑誌に連載したもの。しかも、読者に犯人を当てさせるという懸賞付きのものでした。

坂口安吾が推理諸説に抱いていた不満とは、解決が「合理的」ではないというもの。
心理状態を含め、すべてにおいて合理的な説明がつかない推理諸説が多すぎるから「自分で書いちゃえ」ということになったらしい。

山奥の山荘に集められた作家や画家、詩人など世間の常識からいえば「ふしだらな」芸術家集団の乱倫と狂態に溢れた日々に次々に起こる殺人事件の謎解きを読者へ迫る。

連載された各号の終わりごとに書かれた「読者への挑戦状」というのが、また面白い。
尾崎士郎、太宰治など作家仲間の名前を挙げて、「あんたらには解けないよね」と煽っていたりすることも…。
同時に、アガサ・クリスティのことを、「いちばん合理的」な推理小説と称えている。

確かに、読み終わってネタがバラされた時に「納得!」と思える推理小説です。
「心理」の足跡が解決の鍵になるというのも、良く描かれている。

また、当時のデカダンな感覚というのが描かれているのも、興味深いですね。
僕らの世代は、そんな生活感覚の残滓を幼少の頃に見ていたりするから…。

坂口安吾の本を次回も手に取ってみようかなと思わせる本でした。

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by dairoku126 | 2018-10-03 10:13 | | Comments(0)

『カレーライス!!大盛り』杉田淳子編

e0171821_11115028.jpg題名通り「カレーライス」について書かれた44篇のエッセイを集めたアンソロジー。読み応えがありました。


読み進んでいくと、大正時代に日本に登場してから「カレーライス」が、日本人の「食」に深く浸透している「国民食」であることが良く分かります。
それぞれの時代に応じた「思い入れ」や、時代を経るに従ってカレーの「成熟度」や「種類」が増えているのが良く分かる。
国民的なアイドルの消滅、共感が薄れてきた現代にあって唯一無二の誰もが何らかの思い入れを持てる「存在」と言えなくもない(笑)
ラーメンや寿司では、ここまで切ないといえるような「思い入れ」は無理でしょう。

とにかく、読んでいるとカレーが無性に食べたくなる。
妻に貸したら、読み終わった夜にはメニューが変更になりカレーが出て来ました。

我が身を振り返っても、子供の頃からカレー大好き!
波乗りを始めた頃は、千葉に行くと今のように開けて無かったから食事はカレーかラーメンくらいしか店が無かったし。2日間続けてカレーを昼に食べたこともしばしば。
大学の学食でも、いちばん安くて手っ取り早かった。50円から80円くらいだったかな?
大学に入った頃に「カツカレー」なるものに遭遇して、素晴らしい発明!と感激したのを覚えてます。

会社に入ってからも忙しい時は、先輩に連れられて有楽町ビルの地下のカレースタンド。
10分でランチを済ませることも可能でした。
会社のあった神田錦町界隈はカレーの聖地のようなところで、神保町の「ボンディ」の欧風カレー、スマトラカレー共栄堂、手軽なところでキッチン南海他カレーの名店が揃ってました。学生も多かったから、値段も手頃なものから高級カレーまで揃っていたし…。

まぁ、とにかく日本のカレーは独自の進化を遂げた洋風和食の一番星なんでしょうね。
いまや、外国人まで「日本のカレー」に嵌まる人が増えているとか。
笑えたのは、インド人まで日本のお土産に日本の「カレールー」を買って帰るということ。
彼らにとっては、普段食べてるカレーとは違う「御馳走」に思えるのでしょうか?

それとも、昔の日本人のカレーライス(外でお金を払うカレー)とライスカレー(家で作るカレー)の違いみたいなものなのかしら。

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by dairoku126 | 2018-09-27 12:43 | | Comments(0)

『高松宮と海軍』阿川弘之

e0171821_10001322.jpgほぼ絶版状態の本だったので、AMAZONの中古で購入。
H堂の社史を担当していた同期のM君が言っていたけど、古書店巡りをするよりAMAZONの方が確実に古い本は見つかるとか。

さて、この本は昭和天皇の弟宮・高松宮が薨去された後に計20冊の日記が見つかり、その刊行に向けての経緯を途中から編纂委員に加わった阿川弘之が解説のような形式で書いたもの。
高松宮日記は、江田島の海軍兵学校予科在校中の大正11年1月1日から書き始められ、昭和の動乱期、大戦期を経て、日本敗北後2年目の昭和22年11月5日まで綴られたもの。

ロイヤル・ネイビーを手本として英国流のセンス・オブ・ヒューモアと心身のフレキシビリティを大事にせよ、「ユーモアを解せざるものは海軍士官の資格無し」という教育の成果なのか高松宮には不思議なユーモアのセンスがあり、皇族として前線に出ることが出来ない不満を軍艦に蠢くアブラムシに例えたユーモラスな詩まで作っている。

皇族海軍士官として見た満州事変、2・26事件、対米開戦、戦況詳述など歴史的に価値の高い内容に編纂委員が驚いた様子が具体的に描かれている。
例えば、江田島在学中や海軍勤務中に皇族として特別扱いされることに対しての不満や、満州事変、上海事変に対する国際法無視の陸軍に引きずられる海軍上層部への批判など飾ること無く記されている。
海軍非戦論に立つ高松宮は真珠湾奇襲の7年前に「私は戦争を、どうしても、日本のためにも、道徳の上からも進んでやるべしとは思えない。死力をつくしてもさくべきであると信ずる」とか「陸軍と海軍で日本の米をクヒツブすのはどうかと思ふ」等々、対英米戦に傾斜する時勢に抗うような記述が…。
開戦後は緒戦の勝利に浮かれること無く、第一線部隊、各艦船部隊から送られてくる機密電報、各司令部から送られる指令電報の写しなど事実収集記録に徹している。

この本は、高松宮日記刊行までの経緯を「編纂期前編、後編」と「海軍を語る」の3部構成、付録として「次室士官心得 抄」。
「次室士官」とは兵学校卒の少尉見習い、少尉、中尉のこと。
この心得を読んでいると、「立ち居振る舞い」を学ぶのに役立つことが書いてありますね。
池波正太郎の「男の作法」にも通ずるというか、「ジェントルマンの心得」として読んでも良いのでは…。

阿川弘之が珍しく旧仮名遣いで書いてます。

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by dairoku126 | 2018-09-20 11:44 | | Comments(0)

『世界史の10人』出口治明

e0171821_13505966.jpg僕たちが習ってきた「世界史」というのは、西欧と中国に都合良く書かれた「歴史」だというのが、この本を読むと良く分かります。

この人の本は、ここにも書いた全世界史講義」とか半藤一利との対談「世界史としての日本史」など世界は常に影響を与え合って動いている…ということから歴史を見ていくのが、読んでいて面白い発見がある。
この「世界史の10人」という本も、最新の研究の成果が盛り込まれていて僕たちに刷り込まれた「世界史」の概念をひっくり返してくれるものでした。

そのそも、「世界史の10人」と言われて誰を想像しますか?
この本に取り上げられた「10人」の名前を見ても、日本人に馴染みの無い人が最初から並んで居ます。詳しい内容は、こちらを…。

第一部「世界史のカギはユーラシア大草原にあり」
そして、取り上げられた3人はバイバルスクビライバーブル
クビライは「元寇」で有名なので知っていましたが、後の2人は世界史で習ったかどうかも定かではない。

の大草原に居た遊牧民が気候変動などで動くたびに、中国もヨーロッパも中東も歴史が大きく動いていたのですね。
実は、ソ連崩壊後に中央アジアの旧ソ連圏の国々から発見された新しい資料で「世界史」が大きく塗り替えられている最中なんです。中国もヨーロッパも、この遊牧民の被害者の立場だったので、歴史書では当然「悪者」にしている。
しかし、この遊牧民族がユーラシア大陸を縦横無尽に駆け回ってエジプトに王朝を建て、インドに帝国を創り、中東の諸国の礎を築いてきたことは迂闊にも知りませんでした。
中国だって漢民族が樹立した国の方が少ないくらいですからね。

第2部以降に取り上げられているのは…武則天、王安石、アリエノール、フェデリーコ二世、エリザベス一世、エカチェリーナ二世、ナポレオン三世の7人。
この7人は歴史で習った覚えもあるし、よく知っている名前です。
それでも、教科書で習った話とは全然視点が違うのが、また面白い。

出口氏がイメージする真のリーダーの条件とは、人格が立派であることでも、志が高いことでもなく、結果責任がすべて。「何を成し遂げたか、後世に何どのような影響を与えたか」

自らの環境を切り開き、後世の人間に大きな業績をもたらした人物について、その前後の時代背景を詳説しつつ紹介している良書だと思います。



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by dairoku126 | 2018-09-13 14:48 | | Comments(0)

『はだれ雪 上・下』葉室麟

e0171821_14575469.jpg今回の旅行に持って行った本。
レースまでは、さすがに数ページを読んだだけでしたが、ホノルルに移動してから上下巻を「あっ」という間に読んでしまいました。
葉室麟の描く女性は、ホントに美しく、凜々しい。

藤沢周平の小説に良く出て来る架空の「海坂藩」同様に、葉室麟の小説には「扇野藩」にまつわる話が多いのですが、今回も扇野藩に預けられた旗本・永井勘解由と接待役として出仕させられた寡婦・紗英を中心に話は展開していきます。

そして、永井勘解由が「お預け」となった原因は浅野内匠頭の最後の言葉を聞き取ったからというもの。
「忠臣蔵」の外伝という体裁をとりながら、人としてどう生きるか…という葉室麟の投げかけてくる問いが心に染みる小説でした。
デビューしてから殆どの本を読んできましたが、僕のBest3に入るもの。
急逝が惜しまれてなりません。

勘解由と紗英、勘解由と内蔵助、堀部安兵衛と内蔵助などの会話や交友を通して顕れてくる「人への思い」というものが、我々のカヌークラブをスタート時に根っこに据えたスピリット「他人のために漕ぐ!」に通ずるように読めてしまったからかもしれません。
過酷ともいえる長距離のレースを共に漕ぎきった仲間への信頼・感謝に満たされていたから、余計にそう感じたのかもしれません。
まさに、絶好のタイミングで読んだのかな!

「ひととしてひとをいとおしむ心がなければ、この世は成り立たないのが道理でござる」
人が人を思う大切さに、あらためて気づかされる本でした。

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by dairoku126 | 2018-09-07 15:38 | | Comments(0)

『ハーバード日本史教室』佐藤智恵

e0171821_09015032.jpg飛行機の中で読むつもりだった本を読んでしまいました(笑)

駐日大使だったエドウィン・ライシャワーが1973年にハーバード大学に創設した「ライシャワー日本研究所」では、現在年間50~60に及ぶ授業が開講されているとか。
そこに関係する10人の教授がそれぞれの分野で教えていることを語っています。主な内容は、こちらを

研究対象も日本史のみならず経営、マネジメント、人類学、都市文化、食文化、経済学、哲学と多岐にわたる分野から日本史を見ていくので、日本国内では思いもよらぬアプローチがあり、「外から見るとこう見える」という日本が浮き彫りにされてきます。

当然、そこで語られる名前も日本での教わるのとは評価が違います。
明治維新でも西郷、龍馬よりも木戸、大久保の方が主役となります。
マネジメントが専門のサッチャー教授は、「トルーマンと原爆」について議論する中で、必ず昭和天皇の「終戦の詔勅」を読み上げ、それがリーダーにとっていかに勇気ある決断であったかを教えたいと語る。
原爆投下の決断が正当性なものだったかどうかを学生達に議論させ、リーダーが決断する時には道徳性、倫理感の側面からもチェックを入れなければいけないと教える。

面白かったのは「築地市場から見えてくる日本の強みと弱み」という講義。
役人が机上で作った豊洲市場は、失敗するだろうと断言しています。

10人の教授が口を揃えるように語るのは、日本が「戦争を放棄」する決断をして発展してきたモデルとして世界でも類を見ない国であること。トランプをはじめ、ナショナリズムが再び台頭する中で日本の立ち位置を護って欲しいと切実に願っていることです。

閉塞感が漂う現在の日本の状況の中で、もう一度視野を広げるためにもお勧めの本です。




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by dairoku126 | 2018-08-30 10:08 | | Comments(0)

『碇星』吉村昭

e0171821_10041270.jpg吉村昭の短編集。「碇星」は「いかりぼし」と読みます。
「老い」をテーマにした短編が8編。

吉村昭といえば、膨大な資料に基づいた史実を題材にした長編というイメージでしたが、短編も実に味わい深い。

本人の「あとがき」によれば、長編小説を書いた後は、「書く意欲」を奮い立たせるためにも短編を必ず書くということ。

動かせない史実や資料に縛られ、もがくように物語を綴って行った後は、アタマを切り替えるためにも身の回りを見つめた短編で呼吸を整える必要があるのでしょうね。

BOOKデータベースによると「孤独を分かち合う七十過ぎの三人の男たちを描く「喫煙コーナー」、定年と同時に妻に去られた男の心境を描く「寒牡丹」、葬儀に欠かせぬ男に、かつての上司から特別な頼みごとがきた表題作ほか全八篇。人生を静かに見つめ、生と死を慈しみをこめて描く作品集。」とあります。
AMAZONで「なか見!検索」が出来るので、興味がある方はどうぞ。

このうち表題作の「碇星」や「花火」など数編は自伝的な内容になっていて、結核から奇跡的に蘇った著者の述懐をこめた作品。吉村昭の日記を読んでいるような気分にさせられます。

40ー50代の時に読んだら「?」という感じなのでしょうが、素直に染み込むように物語が入ってくるのは、こちらが歳を取ったということなんでしょうね。
読み終わった後に、しみじみとした気分になりました。

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by dairoku126 | 2018-08-29 10:29 | | Comments(0)