カテゴリ:本( 276 )

『天災から日本史を読みなおすー先人に学ぶ防災』磯田道史

e0171821_10243179.jpg最近、新書を読むことが多くなった。
文庫ブームも去り、出版界は新書に生き残りを託しているとか…。
確かに、新書というのはアップデートな情報をカタチにしやすいメディアではありますが。

これは、磯田先生が東日本大震災を目の当たりにして、個人的に蓄えてきた古文書に記された天災の知見を綴った本。
内容は、こちらを見ていただければ分かると思いますが、豊臣政権を揺るがした二度の大地震、1707年の宝永大地震が招いた富士山大噴火、そして森繁久弥が遭遇した大津波など資料に残された天災を読み解いて行くと「もうひとつの日本史」が顕れてくる。

特に、秀吉が遭遇した二度の大地震のうち、最初の天正大地震が無ければ徳川家康は滅びていたかもしれない。
小牧長久手の闘いの後、徳川攻めの準備が整ったところで起きた大地震は攻撃の最前線の準備を無にしてしまった。一方、三河の徳川は地震の影響が無く、ほとんど無傷のまま。
ここから、秀吉は母を人質に徳川を懐柔する政策に転換するんですね。
まさに、日本史のターニングポイントで大地震が起きている。

それにしても、昔から日本人というのは筆まめなんですね。
「大災害」のことは、当事者で無くても書き残してある。富士山大噴火や高地の津波などのことも、まったく別の地域に伝聞情報などを日記や日誌というカタチで残されている。
最近では地震学者と歴史学者のネットワークが出来て来ているとか。

東日本大震災の時にも神社や昔の街道などは津波の被害をそれほど受けてないのは、過去の知識を活かして移転したり、標高の高いところを通るようにしていたりと「災害」の知見が活かされて来たからでしょう。
大雨での山津波に関しても、旧い地名を見れば危ないところかどうかは分かると言います。

この本に書かれていますが、磯田先生の母上は幼児の時に徳島で津波からギリギリのところで生き延びた経験がおありとか。子供の頃から、そのことを聴かされて育った磯田先生が災害のことを記した古文書に興味を持ったのも必然の成り行きだったかもしれません。

災害から「生き延びる」智恵が、記された本です。


[PR]
by dairoku126 | 2018-12-12 11:04 | | Comments(0)

『眩(くらら)』朝井まかて

e0171821_10034925.png葛飾北斎の娘、応為ことお栄の話。
北斎の娘と同時に弟子として、絵を描くことに燃え尽きた生涯を綴った快作です。

諸田玲子の『きりきり舞い』にも主人公の十返舎一九の娘・舞の友人として登場しますが、ここでもひたすら絵を描くこと以外は無関心な女性としてユーモラスに描かれている。

解説」の冒頭に葉室麟が「くらっときた。なぜか、と言えば、人生の疾走感があるからだ。」と書いていますが、まさに至言。
読み進むうちに、蓮っ葉な江戸娘・お栄の「思い」がひしひしと伝わり、焼き尽くすような熱さを感じます。
父・北斎のコピーではなく、じぶんの絵を描きたい。でも、その自分にまだ届かない!

とはいえ、単なる芸術家の情熱だけを描いた表面的なものではなく、北斎工房を維持していくための金銭的なやりくりも含め、当時の絵師の生活感も微細に描かれている。
ここら辺が妙なリアリティを伴って、薄っぺらな感じになるのを防いでいるのでしょう。

武士崩れの絵師・渓斎栄泉こと善次郎に惹かれていくくだりとか、北斎が卒中で倒れ滝沢馬琴の罵倒に発起して復活を遂げるくだりなども、良いですね。

NHKでの特集ドラマ「『眩(くらら)~北斎の娘~』で原作よりも先に物語りを観たのですが、ドラマ化にあたってかなり端折られている。まぁ、この小説を忠実にドラマ化するには1時間15分足らずには収まらないからでしょうが、北斎とお栄が借金に苦しむ原因となる性悪な姉の遺児・時太郎のことがスッポリと抜け落ちている。
この時太郎がお栄の晩年にも影をさし、そこから彼女の傑作「吉原格子先之図」へと物語が収斂していくのですが…。

この「吉原格子先之図」は太田記念美術館に収蔵されているとか。
落款を押さず、提灯に「應」「為」「栄」とサインを入れるあたりに幾つになっても茶目っ気が抜けなかった葛飾応為の心意気が感じられますね。
常設展示ではないので、いつか見てみたいと思ってます。
e0171821_11014037.jpg


[PR]
by dairoku126 | 2018-11-28 11:10 | | Comments(0)

『女ぎらい ニッポンのミソジニー』上野千鶴子

e0171821_15364966.jpg久しぶりに上野千鶴子の本を読みました。
単行本は、2010年に紀伊国屋書店から出たもの。
文庫本化にあたり「セクハラ」と「こじらせ女子」の2本の論考を追加した。まぁ、なんとも重たかった!

著者自身が「あとがき」に、書いている人間にも、読んでいる人間にも愉快でない本だということを書いているけど、家父長制社会の中で育った我々にとって無意識にーむしろ無自覚にというべきかー思える事柄にも時代の変革の波が襲って来ていることを痛感しました。
まぁ、刷り込まれた思考回路というのは簡単には変えられないけど、それでも自覚するかしないかで間違いを犯す確率が減ることでしょう。

不勉強にして「ミソジニー」という言葉すら知らなかった。
男にとっては「女性蔑視」、女にとっては「自己嫌悪」。
歴史の中で築き上げられてきた男社会に潜むミソジニーという現象を鋭く論考していきます。

まず、最初にやり玉に挙げられるのが吉行淳之介と永井荷風。
「性の二重基準ー聖女と娼婦」とか秋葉原無差別殺人の「非モテのミソジニー」、さらに「女子校文化」とか「東電OL殺人事件」など具体的な例を上げながら論考を進めて行く。

こちらに詳しい目次があるので、そこで何が書かれているかは推測がつくと思いますが…。
文庫版は、それに財務次官のテレ朝局員に対する「セクハラ事件」と「こじらせ女子」という最近の現象についての論考が加えられている。

この問題の核心は、ホモソーシャルホモフォビア、ミソジニーが3点セット。
この関係で社会を眺めてみると、確かに「あるある」どころか「日常茶飯」の事柄だらけ。
いかに家父長制というのが宗教を問わず、社会に深く根を下ろしているか分かります。
ヒップホップなんて、この傾向が強い音楽なのに女性を罵倒する歌詞なのに、女性が熱い支持を寄せるというのだから…。

特に儒教圏(中国、韓国、日本)では、顕著なのが良く分かる。
「女性活躍」と掛け声をかける国会議員(特に自民党)の諸氏の言動をみれば、単なる選挙対策のお題目に過ぎないことが良く分かる。大臣なんて女性だろうが、男性だろうが能力があれば構わないと僕自身は思っているけど、どうみても男よりも女の方が多くなったら党内の不満は爆発するんでしょうね。

僕自身は読んでいて「女子校文化」のあたりから世の中が変わり始めていることを感じましたけどね。その典型としてあげているのが、酒井順子、中村うさぎ。
そして林真理子ほど「女のねたみ、そねみ、ひがみ」を上手く描く作家は居ないとまで…。

重たかったけど、読み終えてみると現代社会の見え方が少し変わったような気がします。
○○ファーストと叫ぶ輩にミソジニー丸出しが多いような。

[PR]
by dairoku126 | 2018-11-26 16:29 | | Comments(0)

朝井まかてに、嵌まりました。

e0171821_10441658.png先日、朝井まかての「ぬけまいる」について書きましたが、この人の軽妙な文章に嵌まってしまいデビュー作『花競べ 向島なずな屋繁盛記』から執筆順に『ちゃんちゃら』、『すかたん』、『先生の御庭番』、そして直木賞受賞作『恋歌』、『阿蘭陀西鶴』と一気に読んでしまいました。

デビュー作から時代小説作家として大きな可能性を感じさせる文章を書いているのに、ビックリした次第です。
作品を重ねるにつれ、そのエンタテインメント性が、どんどん完成度を高めて来る。

グイグイと読者を引き込むチカラに、この人はタダ者ではないという雰囲気を感じさせていたので、初めてノミネートされた6作目で直木賞を受賞したのはプロの作家としての力量を審査員諸氏が認めたからでしょう。

しかも、軽妙洒脱なそれまでの作品とは一線を画すように『恋歌』では、幕末の水戸藩内の天狗党騒乱という時代小説の不可蝕領域に踏み込み、ちゃきちゃきの江戸娘・池田屋登世が水戸藩士・林忠左衛門と恋に落ち、水戸藩士の妻として血で血を洗う騒乱の中を生き延び、歌塾「萩の舎」を主催する中島歌子の生涯を描いている。
中島の死の直前に、彼女の手記を樋口一葉の姉弟子である三宅花圃が発見して読み解いて行くという構成ですが、悲劇的ともいえる生涯を淡々とした文章で描いていく様は見事です。

この受賞作の後に書かれた「阿蘭陀西鶴」でも西鶴の盲目の娘を通して、エンタメ小説の先駆者・西鶴を描くというアクロバティックな手法ですが、盲目ならではの触感、嗅覚、聴覚など五感を駆使して人間の真実の姿を見つめていく。

盲目の娘が早世した母に仕込まれた通りに料理をする場面が数多登場しますが、この料理シーンが季節感の移ろいや和やかな雰囲気を醸し出している。
『恋歌』でも感じたことですが、悲惨とも思える場面でも暗く感じさせない文章の明るさが救いになっている。
この人の持つ「天性の明るさ」みたいなものが投影されているからなのでしょうか?

宮崎あおいが演じていたMHZドラマ「眩(くらら)~北斎の娘~」の原作も朝井まかてだったんですね。

さて、次は何を読もうかな?


[PR]
by dairoku126 | 2018-11-22 11:45 | | Comments(0)

『大江戸定年組 全7巻』風野真知雄

e0171821_14064102.jpg
最初に手に取ったのが、約15年前。
まだ、会社勤めをしていた頃ですが、そろそろ定年という言葉に反応する時期だったんでしょうね。
風野真知雄という作家を知ったのも、この本が最初。

まぁ、内容についてはこちらを見ていただければ、ざっくりとした内容は分かると思いますが、少年の頃に大川(隅田川)での水練を通して仲良くなった生い立ちも身分も違う3人組が還暦を前に再開し、隠居生活を共に愉しもうと隠れ家を探すことから始まります。

北町奉行所の定回り同心・藤村慎三郎、三千五百石の旗本・夏木権之介、小間物屋を営む七福仁左衛門の3人が次々に織りなす物語は、短編形式を取りながら次第に「げむげむ」という新興宗教にまつわる大事件へと展開をみせて、大捕物で幕を閉じる…ということになります。

まぁ、江戸時代という時代設定をとりながら、団塊の世代が定年を迎える時期を見計らって書かれた時代物といった方が良いのかな?
仕事一筋で来た男達が「定年後」をいかに過ごすか…というヒントにもなる話です。
途中で夏木権之介が卒中で倒れ、そのリハビリを仲間が支えるなどのエピソードなどが出て来るのも、現代社会を写して居るのでしょう。

仕事一筋で来た男達が、定年後に”生き甲斐”を感じながら生活を楽しむには…。
上手く行ったり、失敗したりの繰り返しで日々を過ごす老人達の話としては良く出来ている。


[PR]
by dairoku126 | 2018-11-10 14:47 | | Comments(0)

『ぬけまいる』朝井まかて

e0171821_13010101.jpg土曜日の夕方にNHKで始まったドラマ「ぬけまいる」。

奥さんが「読んで面白かったから録画しておいて!」と頼まれたのを一緒に見ていたら、確かに面白い。
まぁ、キャスティングも良いのですが、設定も物語そのものも面白いので、家にあった原作を読み出したら止まらなくなりました。

直木賞作家・朝井まかての本を読むのは初めてでしたが、ストーリーテラーとして上手なものです。感心しました。

三十路を前に鬱屈を抱える幼なじみ三人組お以乃、お蝶、お志花。
若い頃は「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれ、界隈に名を轟かせた娘三人組が、「えいやっ!」とばかりに日常から飛び出して女三人で家族に断りもなく(だから、抜参り)伊勢参りに旅立つ!まぁ、いわば女版東海道中膝栗毛。

「猪鹿蝶」三人それぞれが長短併せ持つ性格で、話の展開する中でチカラを発揮する場所が違うのも良いですね。
だから、仲間って頼もしい!とそれぞれが思うような造りになっています。
ある時には痛快無比、ある時にはペーソスが漂い、物語に必要な要素がてんこ盛りの本でした。

興味がある方は、こちらから講談社のサイトで「試し読み」が出来ます。
e0171821_13010500.jpg
そして、こちらのドラマも全8話のうち2話が終わったのですが、原作を読んでみると今後の展開が愉しみになりました。
お以乃(ともさかりえ)、お蝶(田中麗菜)、お志花(佐藤江梨子)のキャスティングは「いかにも!」と頷ける出来の良さです。
これから、毎回ゲスト出演として大物が出て来るらしい。
大地真央が初回から謎に包まれた感じで出て来ますが、これは原作には無い役。
ドラマの中で、どう暴れてくれるのか、これも楽しみです。


[PR]
by dairoku126 | 2018-11-09 13:48 | | Comments(0)

『日本が売られる』堤未果

e0171821_16470304.jpg新聞の書評で取り上げられていたので、読んだのですが、身の毛のよだつようなショッキングな内容でした。

国民の安全・安心を司るはずの国(政府・官僚機構もふくめて)が、新自由主義の亡者どもに内部から切り崩されている。
その内容は、こちらの目次を見ていただけると分かると思いますが、国民生活の基盤となるものが次々に「規制緩和」の名の下に外資に売り渡されようとしている。

「水道事業を民間企業に…」とブチ上げた麻生副総理の言葉どおりに、黒字が出ているのにもかかわらず民間に売ろうとして市議会に反対された大阪市の事例に、市議会の議決など必要ないように法改正をしたことなんてマスコミで一切報道されていません。
アメリカの要望で、「遺伝子組み換え食品」の表示を無くすなんて改悪も報道されてないし。
こんな国を「売る」ような法案が通る時には、オウム受刑者の死刑とかマスコミが飛びつきそうなネタが必ず用意されている。

教育に「愛国心」を盛り込めなどと「教育改革」を叫ぶ現政権が、愛国心の欠片も無い「売国奴」だらけというのは冗談にしても酷すぎる。
「規制改革」、「国家戦略特区」という言葉には必ずハゲタカ・ファンドの指示があると見ても良いほど。どこに「不平等条約」を自ら進んで結ぶ国があるのでしょう?
明治の先人が苦労して条約改正に努力したのに…。
まぁ、歴史に学ばない人間ばかりが集まってますからね、現政府には。
まさに「今だけ、カネだけ、自分だけ」の新自由主義の亡者が集まって、やりたい放題になっている。

安倍政権の9年間は、アメリカ政府に影響力がある農薬・化学薬品メーカーや医療機器・新薬メーカーの利益のために、国内法を改正して世界中で売れなくなった発がん性がある農薬を日本で売ることが出来るようにしたり、アメリカの新薬の特許期間を長引かせるなど、誰に仕えているのか分からないほどの献身ぶり。

その旗振りをしているのが、この本を読んで「影の総理」じゃないかと思った竹中平蔵。
彼が望んだことは、すべて法案として通っています。
平成28年以降で、彼が会長を務めるパソナ・グループが経産省、厚労省などから受注した総額は37億4千万円。これ以外にも非公開になってますが、東京オリンピックのボランティアの募集・研修・人材派遣もパソナ!

それにしても、この本が幻冬舎から出たのは驚きです。

読み終わって暗澹たる思いに耽るだけじゃダメですね。
次の選挙で何とかしなきゃ。

[PR]
by dairoku126 | 2018-10-24 17:22 | | Comments(0)

『球形の荒野』、『点と線』松本清張

e0171821_10342349.jpgこの前、半藤一利の「清張さんと司馬さん」という編集者時代に担当した2大作家とのあれこれを綴った本を読んでいたら、数十年ぶりに松本清張の本が読みたくなりました。

ということで、まずは『球形の荒野』を…。
この話は、読んだというよりNHKでのドラマで覚えています。
Wikiを見ていただければ分かりますが、人気小説だけに映画化1回、TVで8回もドラマ化されている。

僕が覚えているのは1969年版のNHK水曜劇場。
野上久美子を山本陽子、そして野上顕一郎が森雅之
太平洋戦争終結のために外交官として赴任先の中立国で終戦工作のため、連合軍の諜報機関と関わり、スイスの病院で病死したことになっていた顕一郎という人物を演じるには森雅之の知的で彫りの深い顔立ちが際立っていました。
僕の父と成城学園で一緒だったので、父が肝煎りを努めていた成城学園OBによる絵画の展覧会にも出品してくれていました。本名の「有島」名義で出していましたけど…。

さて、本の方ですが「あらすじ」は分かっていたものの読み出すと、実に面白い。
1960年に「オール讀物」で連載開始なので、すでに戦後の混乱から抜け出して高度成長期に入り始めた時代。
僕も小学校高学年になっていた時代なので、漠然とですが当時の社会風俗などは分かります。
松本清張の本をきちんと読むのは初めてといって良いのですが、丹念な文章に感心しました。
登場してくる土地も馴染みのあるところばかりなので、地勢が目に浮かぶ。

京都のMホテル(都ホテルでしょう)でのピストル銃撃事件あたりから、話が急展開して最後はハッピーエンド。この最後の観音崎でのシーンは余韻がありますね。
上下2冊をあっという間に読んでしまった。

e0171821_10342778.jpg
点と線』は、社会派推理小説の先駆けとなった作品。
東京駅で13番線から15番線が見渡せるという「4分間の空白」があまりにも有名なトリック。

今回初めて知りましたが、この作品は交通公社(現JTB)が出していた「旅」という雑誌に連載していたのですね。
しかも当時の編集長が戸塚文子だったとは。

時刻表が効果的に登場したり、結核で鎌倉に療養中の安田の妻が時刻表を見ながら架空の「旅」をして愉しむなどということが、後に謎解きのキーになったりするんでしょうね。
人気作家になる前の松本清張が「旅」という媒体に合わせて書いたとも…。勘ぐりすぎかな?

こちらも、作品の展開にあたって舞台となる場所が周知のところばかり。
香椎海岸、赤坂、鎌倉など風間完の挿絵も時代を映して良い。

どちらの作品を読んでも、新幹線は無い時代のことだし、人々の移動も現在のように盛んでは無い時代のことだから、このような小説を読みながら旅をした気分になっていたのでしょうね。中流家庭以上には女中さんが普通にいた時代だったな…と読みながら想い出しました。
電話をかけるにも、すべて交換台を通してなんて時代ですから。

現在の日本からは想像もできないほど、ゆったりとした時間が流れる「古き良き日本」を感じさせてくれる小説でした。この物語に懐かしさを覚えるのは、我々の世代が最後でしょうね。


[PR]
by dairoku126 | 2018-10-18 11:49 | | Comments(0)

『闇の峠』諸田玲子

e0171821_12343105.jpg先週の土曜日あたりから急に寒くなって来ました。
この寒暖差は、堪えます。
布団も厚めの羽毛に変えました。

ということで、風邪気味だったのでカヌーは休んで読書をすることに…。諸田玲子の新しい文庫本が出ていたので、買っておいたのを読み始めました。
読み始めてみて「?」という疑問が。
これは以前に読んだ「風聞き草墓標」では…と思いながら途中まで読んでいたら、文庫化に際してタイトルを変えていたようで。

まぁ、前に読んだ時は謎に惹かれるあまり読み飛ばし気味に読んだので、今回はじっくりと読むことが出来たから良しとしよう。
じっくりと読んだ分だけ、細部の事柄がよく調べてあることに感心しました。

リンクを貼った新潮社のサイトにある「書評」というところに、この物語の謎の発端となる勘定奉行・萩原重秀のことを研究してきた金沢大学の村井教授のコメントを読むと、ヒロインは諸田玲子がかなり造形を施したようですが、実在の人物。
物語の方では、彼女が探偵役として大岡越前と情報を交換しながら事件の核心に迫る…という風になっています。

特に、江戸と佐渡を結ぶ謎解きの旅が面白い。
「出女に入鉄砲」と、当時の女性にとって旅することが困難なものであったかが良く描かれている。村井教授の書評にも書かれていましたが、実際に出雲崎、佐渡、江戸などを歩いて調査したようですね。文庫本には、単行本に無かった地図が巻頭についていた。

今年も秋が短く、すでに初冬のような陽気になってきたので、本を読む日々が増えるかな?
レースもあと二つ残っているのに…。

[PR]
by dairoku126 | 2018-10-16 13:02 | | Comments(0)

『蘇える鬼平犯科帳―池波正太郎と七人の作家』

e0171821_09583568.jpg池波正太郎が長谷川平蔵を主人公とした「浅草・御厩河岸」で「鬼平犯科帳」をスタートさせたのが1967年のこと。
2017年、「鬼平」誕生50周年を記念して7人の作家が新たな「鬼平」物語に挑んだ競作短編集です。

逢坂剛、諸田玲子、土橋章宏、上田秀人、門井慶喜、風野真知雄、梶よう子、そして池波本人がBest5に選んだ「瓶割り小僧」を収録という豪華な顔ぶれ。
書店で見かけて、「読むっきゃない」と手に取りました。

読んでみると、それぞれの作家の「色」が出ていて面白い。
みんな「鬼平」のファンなんでしょうね。
取り上げる題材や人物の選び方が「いかにも」という感じです。
作品の内容については、こちらを…。

個人的な好みからいうと、諸田玲子の「最後の女」、土橋章宏の「隠し味」、門井慶喜の「浅草・今戸橋」あたりが好きですね。
諸田玲子は「妖盗・葵小僧」の犠牲となった女性を主人公に葵小僧と鬼平の再対決。
事件を契機に、長谷川平蔵に焦がれる女心が切ない!

「超高速!参勤交代」の土橋章宏は料理人と鬼平の対決。良い雰囲気を出してます。
父譲りの味を巡って…というのが「隠し味」になった好篇です。

門井慶喜はタイトルから窺われるように池波の文章模写を徹底している。
しかも、狂言回し役に「うさぎ」こと木村忠伍!という念の入れよう。

あらためて「鬼平犯科帳」を再読してみようか…という気にさせてくれる短編集でした。

[PR]
by dairoku126 | 2018-10-11 10:37 | | Comments(0)