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『善人長屋』シリーズ:西條奈加

『善人長屋』シリーズ:西條奈加_e0171821_14181352.pngいやぁ、面白いシリーズでした。
「善人長屋」という異名を持つ長屋、そこの住人はみな裏稼業を持つ、小悪党ばかり。そんな長屋に正真正銘の善人の錠前職人・加助が住むことになって、加助の「善行」に振り回される。

池波正太郎の作品によく使われる「人は悪いことをしながら、善い人でありたいと願っている」というのを地で行くようなドタバタ劇の連続です。
3冊のシリーズは、最初の「善人長屋」と最後の「大川契り」が短編。第2作の「閻魔の世直し」が長編です。

この人の作品は、どれもそうですが、時代小説の体裁を取りながら現代の社会問題にも切り込んでいく…というのが特長。

「正義」とは何か?
匿名を良いことに、ネット上で正論を振りかざす傾向にも辛辣な目を向けているような。
「善」と「悪」の二つの基準だけで、社会が成り立つのかのような幼稚な議論に陥りがちな現代社会に対しての警告でもあるような。
人情味あふれる話の中に、そんな作者の思惑が見えてくる話も…。

「一日十善」を地で行く加助に嫌々ながら付き合って、それぞれの裏稼業の得意技を発揮して加助の善行を手助けしていく。
裏稼業に入った事情は人様々ながら、人間として守るべき一線だけは必ず守る。
本当の「悪」にドップリと浸かりきれない人達の手練手管には、ついつい応援する気持ちが募ります。

試し読みは、こちらから。


by dairoku126 | 2019-08-15 14:53 | | Comments(0)


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