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『高松宮と終戦工作』工藤美知尋

『高松宮と終戦工作』工藤美知尋_e0171821_11394154.jpg海軍士官だった高松宮に関しては、阿川弘之が「高松宮日記」を編纂するときに書いた本があり、このブログにも書きました

この本は、その後「高松宮日記」が古本屋に並んでいるのを見かけた著者が、開戦以前から英米を相手に戦争をすることを危惧していた高松宮が戦争状態が悪化をたどる中、終戦工作や東条英機暗殺に関してどう関わっていたかを中心に書かれたもの。
なかなか興味深い話が、満載の本でした。

戦況が悪化をたどる中、東条英機が首相、陸軍大臣、陸軍参謀総長まで兼務して、なおかつ海軍大臣の嶋田大将にも軍令部総長を兼ねることを要求し、独裁的に国の進路を決める権限を手にしていたことなど知らなかった。
その政策を批判した新聞記者を取り調べ、起訴は無理として釈放した検事を停職処分にした上、43歳という年齢にもかかわらず赤紙を出して戦地に送ろうとしたり、逓信省通信院工務局長で日本の通信技術の最高責任者だった松前重義(戦後に東海大を設立)を二等兵で戦地に送ろうと謀った。高松宮でさえ、軍令部から横須賀へ左遷されるという独裁ぶり。
まさに「東条一強」体制ですね。現在も似たような状況ですが…。

こうした状況の中で東条英機を暗殺する計画が、高松宮をはじめ首相経験者であった重臣とか高木海軍少将など海軍中枢から起きたとしても不思議ではない。
実行計画まで綿密に練られていく様子が、実に興味深い。

実行直前に、戦況に憂慮した昭和天皇が和平への道を選択し、小磯・米内連立内閣の発足、そして鈴木貫太郎内閣へと刷新され、ポツダム宣言受諾という歴史の流れになるのですが…。

知られざる歴史の内幕というのが、実に興味深い。
高松宮日記をはじめ、近衛日記、細川日記、木戸日記など関係した人の日記や回想録など確度の高い資料を丹念に付き合わて真相に迫る。
コピペと歴史修正の塊、「日本国紀」なんかでは、絶対に触れられない事件でしょう。



by dairoku126 | 2018-12-19 12:32 | | Comments(0)


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