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『日本史の論点ー邪馬台国から象徴天皇制までー』中公新書編集部編

『日本史の論点ー邪馬台国から象徴天皇制までー』中公新書編集部編_e0171821_14373728.pngかつての常識は、いまは非常識?
「大化の改新645(むしごひき)」とか「1192(いいくにつくろう)鎌倉幕府」という僕が子供の頃に習った日本史の教科書は、現在かなり違うものになっているらしい。
この新書は、日本史を29の論点で最新の研究成果を取り入れて、整理し、論じていく良書だと思う。
昔の常識に囚われている我々には、ある意味「目から鱗」です。

先日の仁徳天皇陵の発掘(とはいえ、まだまだ一部ですが…)をはじめ、学術的なタブーが取り払われて来た現在の日本史研究を「古代」、「中世」、「近世」、「近代」、「現代」の5つの時代区分で5人の研究者が明快に語っていきます。
例えば「邪馬台国」にしても、日本列島にあった数多くの豪族国歌の中で中国大陸にあった三国のひとつ・魏と親交を結んでいた国として位置づけているし、それが日本列島を代表する唯一の王権国家としては疑問であるとか。
早い話が、北部九州にあった連合国家の代表が邪馬台国が中国の歴史に書かれたに過ぎない。

それでは、後の大和朝廷に繋がる国はどこにあったかというと、かつて「邪馬台国論争」として大論争になった畿内説・九州説でいえば、畿内説の方が纏向遺跡や箸墓古墳などがあり、有力とされているとか。ただし、魏志倭人伝に描かれた都の状況とは一致しないので、別の豪族連合国家があったとする説の方が説得力がある。

こんな感じで、読んでいくと実に面白い発見が幾つかありました。
たとえば、明治という時代にしても薩長史観でいえば「江戸の否定」ですが、現在の歴史学では「江戸の達成」として捉えた方が良いなどというのも痛快でした。

そして、授業の時は避けていたというか(時間切れのカタチということも…)「現代」についても、かなり面白い話が見えてきます。鳩山一郎とか岸信介といった公職追放されていた人間が政界に復帰して、吉田茂の「軽武装路線」を押しのけて「戦前回帰」を果たそうと画策していたなんて絶対に教えてくれなかった事柄ですから。
田中角栄のロッキード事件についての話も面白かった。

平成最後の年に、読んでおいても損にはならないと思います。

by dairoku126 | 2018-12-14 15:34 | | Comments(0)


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