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『とびきり屋見立て帖』シリーズ 山本兼一

『とびきり屋見立て帖』シリーズ 山本兼一_e0171821_13361792.jpg山本兼一が死の直前まで書いていた4巻のシリーズです。
始まりとなる『千両花嫁』、『ええもんひとつ』、『赤絵そうめん』、『利休の茶杓』と続けて読んで来ると、著者が黄泉国へ行かなければ、どのような展開になっていたのか?凄く気になる。

シリーズの大筋としては、こちらを見ていただければ分かると思いますが、京で屈指の茶道具屋の愛娘・ゆずと奉公人の真之介が駆け落ち同然に三条木屋町に開いた道具屋「とびきり屋」を舞台に幕末の京都の騒然とした中で繰り広げられる数々のエピソード。
”見立て”と”度胸”で日々を乗り越えていく夫婦の、微笑ましくも奮闘する様子が描かれていきます。

藤沢周平の『用心棒日月抄』で裏のストーリーとして「赤穂浪士」が展開していたように、この物語でも徳川14代将軍・家茂の上洛に伴い京に雪崩れ込んだ浪士組(後の新選組)や坂本龍馬、勝海舟、桂小五郎、高杉晋作などが「とびきり屋」に顔を出します。
坂本龍馬は、この夫婦が気に入り下宿までしてしまう。

そして、店開きの時にチカラになってくれたのが同業の道具屋・枡屋喜右エ門。
この名前にピンと来てしまいました。
物語の展開に伴い古高俊太郎だということが明かされるのですが…。

もしかしたら、最後の短編「利休の茶杓」で終わるのが良かったかもしれませんね。
この時点では、まだ新選組の内紛も起きていないし、三条通の並びにある池田屋に新選組が切り込んでも居ないし、枡屋も捕縛され拷問される事件も起きてない。
このような事件が起きていたら、この心優しい夫婦がどれだけ胸を痛めたことか。

それにしても、茶道具やその他もろもろの道具のことを著者はどれだけ勉強したのか?と思いつつ読んでいたら、学生時代に古道具の競り市でアルバイトをしていたとか。
まぁ、そんなバイトが出来るのも京都ならではのことでしょうけど…。

司馬遼太郎が「好いても惚れない」と喝破した京都人のしたたかさや、物語の舞台となっている京都の空気感がチラホラと垣間見えて、シリーズの面白さを引き立てているのかも…。
まさに「権力の貸座敷」としての京都が描かれています。

by dairoku126 | 2018-03-20 14:16 | | Comments(0)


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