今年になってから原田マハの小説を片っ端から読んでいますが、これには参ったな。実に、上手い。
まぁ、彼女の本で「ハズレ」というのは、ほとんど無いのですがね。あらすじなどは、
こちらを読んでください。
それにしても、なんでこんなに映画のことに詳しいのだろうと思ったら、片桐はいりの解説を読んで納得しました。片桐はいりは学生時代から足かけ7年間、銀座和光裏のシネスイッチ銀座という名画座(前身は銀座文化劇場)で「もぎり」のバイトをしていたそうですが、原田マハも学生時代に池袋文芸座で「もぎり」をやっていたとか。
同じ年の二人ですから「もぎり、もぎられ」の関係になっていたかもしれませんね。
いわゆる小さな名画座が、この小説のキーになるのですが、そんな小さな名画座というのが再開発や大手のシネコンの登場で消えていく。
僕らの頃は、ゴダールの見損ねた映画などは有楽町駅裏のゴミゴミしたところにあった名画座へいけば見ることが出来ました。仕事場が有楽町だったので仕事の合間にちょくちょく見に行きました。そう、映画を観るのは仕事の一部だったのです。
幸いにも、職場のあった有楽町ビルの2Fはスバル座。
ここは、アメリカン・ニューシネマをセレクトして上映していたりしたので、お昼ご飯を食べてから良く行きました。映画が終わって明るくなると、観客が全部シロクマ広告社の人間だったこともあります。(笑)
後にシロクマ・ホールディングスの会長にまで上り詰めたアートディレクターS氏も、昼の部サボり鑑賞の常連でした。で、知り合いを見つけては、直ぐ横にあった喫茶店に行って映画評を喋り合ったりしていたのですが、余裕のある時代だったんですね。
会社勤めをしてから夜に映画を見に行った記憶は、あまりない(笑)。
そんな昔のことを想い出しながら、読んで行きました。
ネット時代を踏まえて、日米の映画好き爺さんが激論をネット上で闘わせて行く展開は当初予期しなかったものの引き込まれる迫力があります。
匿名同士でかつての名画をポジティブにとらえるか、ネガティブに批評するかの闘い。
しかも、アメリカの「ローズ・バッド」というハンドルネームの人物がN.Y.タイムスの映画評で世界的に有名な人物だったとは…。