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『荒神』宮部みゆき

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宮部みゆきの時代物といえば『本所深川ふしぎ草子』とか『三島屋変調百物語』シリーズのように人智の及ばない事柄を描いたものが多いのですが、この『荒神』はさらに異色な色合いが強い物語。

「時は元禄、東北の小藩の山村が、一夜にして壊滅した。隣り合い、いがみ合う二藩の思惑が交錯する地で起きた厄災。永津野藩主の側近を務める曽谷弾正の妹・朱音は、村から逃げ延びた少年を助けるが、語られた真相は想像を絶するものだった…。太平の世にあっても常に争いの火種を抱える人びと。その人間が生み出した「悪」に対し、民草はいかに立ち向かうのか。」と本の紹介にあるように”物の怪”というには、あまりにも凄まじい怪物の出現に読んでいて怖くなるほど…。

それでも、止められない、止まらないのが宮部みゆきの筆力なんですけど。

この本が世に出たのは2014年8月。
読みながら”荒神”というのは”原発”の暗喩ではないか?と思い始めました。いがみ合う二藩の成り立ちをいえば、関ヶ原の功績を認められて支藩として独立を許された藩と親藩という関係。未だに親藩の方は、併合を目論んでいる。
そんな力関係の中で、小さな藩が親藩に対抗すべく呪法などを駆使して、二藩の間にある中立地である「神の山」に眠らせた”怪物”が目覚めてしまうばかりか、コントロールが効かない状態になってしまう。
これって、東日本大震災の福島第一原発の事故とかぶりませんか?
人間の欲望が生み出した「悪」がコントロールが効かない状態になったらどうなるか、ということを描いているとしか思えない。しかも、舞台は東北だし。

それでも、「人間の優しさ」や「人を想う気持ち」が、なんとか収束に導いていくという救いはありますが…。読み終わった後にも、不思議な余韻が漂う物語です。

by dairoku126 | 2017-07-14 11:41 | | Comments(0)


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