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浅田次郎『天切り松 闇がたり』シリーズ

浅田次郎『天切り松 闇がたり』シリーズ_e0171821_15222929.jpgいやぁ、まさに止められない、止まらない…
暑さも忘れて読み耽ってしまいました。

Amazonの解説によれば『夜更けの留置場に現れた、その不思議な老人は六尺四方にしか聞こえないという夜盗の声音「闇がたり」で、遙かな昔を物語り始めた―。時は大正ロマン華やかなりし頃、帝都に名を馳せた義賊「目細の安吉」一家。盗られて困らぬ天下のお宝だけを狙い、貧しい人々には救いの手をさしのべる。義理と人情に命を賭けた、粋でいなせな怪盗たちの胸のすく大活躍を描く傑作悪漢小説シリーズ』とありますが、まさに粋でいなせな怪盗の話。

80歳に手が届きそうな天切り松が警視総監に頼まれて、留置場や警察署に現れては、語り始める昔の盗賊の話は留置されている犯罪者ばかりでなく、徐々に看守や刑事、はては警察署長までが楽しみに待つことになってくる。話の切っ掛けも、その日の留置場にぶち込まれた現代の犯罪者の犯した犯罪をネタに始まります。
たとえば、外国人女性を売春目的で斡旋した男などの時には、昔の「女衒」の話から始めるという風に自分の犯した罪の本質に気付かせる…というのが主な構造なんですが、現代の犯罪が「粋でもないし」、なによりも「カッコ悪い」と思わせるほどちっぽけなことに見えて来る。
ヘンな勧善懲悪に陥らないから良いんです。

1ー3巻までが大正時代が舞台、4-5巻になると昭和になりますが、時代が良く描けているし、なによりも主人公である「天切り松」の属する「目細の安吉」一家の面々のカッコ良いこと。
それぞれのキャラクターがクッキリとして、それぞれの気っ風が美しい。
それというのも、江戸弁で語られる歌舞伎まがいの台詞が効いているからですね。

故・中村勘三郎がこのシリーズを愛読していて、浅田次郎に中村座の座付き役者として歌舞伎を書いて欲しいと懇願したほど。浅田次郎は、河竹黙阿弥が大好きでと答えていますが、「歌舞伎というのは江戸っ子にとっては特別なものだから、畏れ多くて…」と断りをいれたとか。
そこら辺は『天切り松読本』にも二人の対談として載っています。

このシリーズ、浅田次郎はライフワークとして書き続けて行きたいと言っているので、新しい本がでるのを楽しみに待っています。
by dairoku126 | 2015-07-15 15:53 | | Comments(0)


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