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「音楽㊙講座」山下洋輔

「音楽㊙講座」山下洋輔_e0171821_17491780.jpgジャズ・ピアニスト山下洋輔の対談集。
対談相手は、クラシック界から茂木大輔、邦楽からパーカッショニスト&邦楽囃子仙波流家元仙波清彦、音楽学者・徳丸吉彦という山下洋輔の幅広い交友関係から選りすぐった面々。実に面白い話が満載です。
しかも、音楽をあまり知らない人でも分かるように、本文の下に丁寧な注釈付き。

茂木大輔とは、やはりクラシックを中心に話を進めて行くのですが、山下洋輔が「ラプソディ・イン・ブルー」からクラシックのオーケストラとの競演を続けて来たこともあり、また茂木自身もクラシックというジャンルに囚われない活動を続けてきたこともあり、話がどんどんと発展して行きます。演奏会でオーケストラがノって来ると、実はピッチが上がってくるからオーケストラの楽団員としては「絶対音感」が無い方が良い!なんて話は面白かったし、初めての指揮者と演る時には最初の練習で到達点が見えてしまうなんて話も面白かった。

仙波清彦は歌舞伎の囃子方としても有名ですが、日本のフュージョン界で一世を風靡したThe SQUAREや「はにわオールスターズ」でも活動した、やはりジャンル超えの打楽器奏者。
邦楽の中でも能、歌舞伎、囃子方の違いとか、興味深い話が満載です。

徳丸良彦は、山下洋輔が国立音大の頃からの恩師。音楽学というジャンルでは世界的な学者さんのようで、音楽に「科学」を持ち込むという方法論で「音楽」というものを解析するかと思えば、アジアの民族音楽の保存に努めてベトナムの宮廷音楽を復元したりと多様な活動を続けている。

2001年に出された本が13年ほどして文庫になったのですが、内容的にはさほど古びた感じがしないのは、それぞれの活動が一貫しているからでしょう。
この本で話し合われたことが、内容的には深くなったり、形態的に新しくなってはいるもののコンセプト的には変わっていないからでしょう。

ちなみに文庫版のあとがきに「AKB48現象」について、この3人に分析してもらったというものが載っているので、ご紹介を…。
茂木理論は「テレビにおける日本音楽文化の変遷とその分析」とでもいうもので、キャンディーズから説き起こし「踊りを伴うバックコーラスが独立した」という説を中心に、ピンクレディー以後、子供が踊りを真似することによって日本文化として定着していく、というもの。

仙波理論は、「あのような形態の芸能は大昔からあり、御贔屓筋(ファン)が創り上げて行く成り立ちは、まさに歌舞伎そのものである。さらに幕府の弾圧も無いから遊女歌舞伎と野郎歌舞伎が束になってかかって来る感じ」とのこと。

徳丸先生は、<ともにあること>being togetherを示すための一つの形式。その形式を共有することを確認することが難しいので、若い人々は踊りや振りに頼るのではないでしょうか、とのこと。

梅雨空の下、楽しい時間を過ごすには、面白い本でした。
by dairoku126 | 2014-06-08 20:27 | | Comments(0)


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