人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「日本人の矜持-九人との対話-」藤原正彦

「日本人の矜持-九人との対話-」藤原正彦_e0171821_17345952.jpg数学者・藤原正彦と九人の碩学・賢者との対話集です。
新潮文庫の内容紹介には「国家は将来ある子供たちの芽を摘もうとしている。英語早期教育、薄い国語教科書、愚かな平等教育、歪んだ個性の尊重──。真に身につけるべきは、読書による国語力、基礎の反復訓練による我慢力、儚いものの美を感得する感受性、歌う心、卑怯を憎む心…」とあるのですが、まさに論点をそこに絞って対話が進んで行く。

対話の相手は斎藤学、中西輝政、曾野綾子、山田太一、佐藤優、五木寛之、ビートたけし、佐藤愛子、阿川弘之といった面々。
それぞれに面白い話が鏤められているのですが、佐藤優との「インテリジェンス(国際諜報力)」の話や、五木寛之との終戦時に満州・朝鮮から引き揚げてきた悲惨な話などは臨場感に溢れて引き込まれて行きます。
ビートたけしが数学で遊んでいるというのも、意外な話!映画の編集時にも、上手く出来た時には数学的な法則に則っていることを発見したという話は面白かった。
その方が映像のリズム感が出ますもんね。

平安時代からの伝統をもつ日本文学が世界に誇れるものだという話は良く分かりますが、数学も世界的なレベルを江戸時代から超えていたという話は初耳でした。
独創的な研究をするには「個性」を尊重することより、「読み書きそろばん」といった江戸時代の寺子屋的な教育を幼児期から徹底して行くことが重要だとの話も納得出来ます。
やはり、音読するというのは独創力を司る大脳の前頭前野を刺激するらしい。
ノーベル物理学賞の湯川秀樹は祖父から漢文の素読を、数学者・岡潔は多変数解析函数論の世界で3大難問といわれた問題をすべて解く前に松尾芭蕉の研究を1年間行ったとか。

漱石や鴎外が難しいからといって小学校の教科書から消えてしまっていたということも初めて知りました。我々の世代は親が旧制高校で育っていますから、「教養」という直ぐに役に立ちそうもないことを親が率先して身につけさせようという意識が残ってましたけど…。
とにかく、本を読むことに親がケチることはなかった。

佐藤愛子との対談で「愛国心」についても明快に説明がなされています。
「愛国心」という言葉には異質なものが含まれていて、ひとつは「自国の文化や伝統、歴史、情緒、自然などを愛する態度」から育まれる「祖国愛」と、「自国の国益ばかり追い、他国はどうでも良い」という「ナショナリズム」があるので、これからは単純に「祖国愛」という言葉で良いじゃないか。「愛国心」という言葉を使いたがる人間は胡散臭いのが多いから…。

確かに、読んでいくと日本の教育は崩壊寸前にあることが良く分かります。
この国は、ホントにどうなっていくんでしょうね?
by dairoku126 | 2014-03-25 18:31 | | Comments(0)


<< 新芽! 合掌!安西水丸さん >>