健診も無事に済んだので(結果はまだ出ていませんが…)、健診の合間に読み終えた藤沢周平生前最後の作品のことを。
これは、掌編12話からなる「江戸おんな絵姿十二景」と安藤広重の「
名所江戸百景」を舞台とした短編7話からなる小品集。
特に前半の掌編は原稿用紙12-3枚のものですが、読んでいると映像が目の前に浮かぶような巧みな出来映え。
どれだけ推敲を重ねたんでしょうね?
掌編ですから結末がある訳では無く、須臾の間の心の動きや情景を描いているだけなのに、それぞれの主人公の人生を描き尽くして目の前に提示してくれるような筆力です。
僕が読んだ中では、これほど短いものの中で上手い!と思ったのは、藤沢周平とサマセット・モームだけじゃないかな?
著者自身の「あとがき」に『「江戸おんな絵姿十二景」は文藝春秋本誌に1年間連載したもので1枚の絵に主題を得て、短い物語をつくるという企画』だったと書いてありましたが、浮世絵の方は著者自身(当時浮世絵に凝っていたそうです)のチョイスではなく、短いあらすじを作ってから編集者に探してもらい、その絵が決まってから話の方を微調整した…とのこと。
担当編集者は、大変な苦労をしたとか。
そりゃそうでしょうね。話の方は1月から始まって、ほぼ季節通りに進んでいくのですが、それに対応したピッタリの浮世絵を探すというのは…。季節感も合ってなければいけないし。
立ち読みは、
こちらから。
やはり、池波正太郎、司馬遼太郎、藤沢周平というのは持ち味こそ違え、何回読んでも新鮮な驚きを与えてくれる存在です。