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「潮鳴り」葉室 麟

「潮鳴り」葉室 麟_e0171821_21525191.jpg今年は週末になると天気が悪いようで、今日も朝から霧雨が降り続き、寒い日曜日。こんな日は、読書でもするしかない。

「潮鳴り」は葉室麟が直木賞を獲った「蜩の記」と同じく豊後・羽根藩を舞台に「再起」をテーマに書かれた物語。
狷介さゆえに役目をしくじりお役御免・隠居となった主人公、伊吹櫂蔵は漁村で無頼な日々を過ごすうちに「襤褸蔵」と呼ばれるほど落ちぶれていく。
ある日、家督を譲った腹違いの弟が切腹。
遺書から借銀を巡る藩内の闇に巻き込まれたのが原因と知る。
直後、なぜか藩から弟と同じ新田開発奉行並として出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がる決意を固める……。

落ちた花は二度と咲かないー男に捨てられ漁村で飲み屋を営んでいた女・お芳と、三井越後屋の大番頭の地位と家族を投げ捨てて俳諧師として漁村に滞在していた咲庵(しゅあん)。
それぞれの屈託を抱えた3人が「再生」をかけて、伊吹櫂蔵とともに羽根藩の暗部に挑んで行くというストーリーですが、出仕を決めて家に帰っても櫂蔵の継母との軋轢など、負わされた荷物の重さは櫂蔵を鍛えていく。武士にとって「生きること」が「死ぬこと」よりも辛いという設定が、物語の通奏低音のように響いて行きます。
そういう意味では、いままでの時代小説とはひと味違うのかな?

なかなかに面白く読めたのですが、やはり直木賞受賞前の方が最後まで緊張感を保っていたような気もします。上手くなっているし、「巧み」になってきてはいるのですが…。
そこが、残念でした。
by dairoku126 | 2014-03-02 22:38 | | Comments(0)


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