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「春風伝」

「春風伝」_e0171821_20464688.jpg「春風」とは、高杉晋作の諱(いみな)、27歳8ヶ月にして怒濤のような生涯を閉じた快男児に相応しいかもしれませんね。
幕末の志士というと、どこかファナティックな感じや、権謀術数というイメージがつきまといますが、この人と坂本龍馬の二人は垢抜けているというか、時代の熱狂に流されること無く超然としたリアリストという印象が強い。さらには、両者とも時代を大きく動かした途端に生涯を閉じてしまう。
また、高杉は「奇兵隊」、坂本は「海援隊」と、士農工商の枠を超えたタスクフォース的な新しい組織を生み出したところも共通している。思考が柔軟なんです。

まさに"春風駘蕩"という感じ。

高杉晋作の伝記というと司馬遼太郎の「世に棲む日々」が、あまりにも有名ですし、ファンも多いことでしょう。僕も司馬ファンとして当然の如く読んだのですが、実はあまりピンと来なかった。幕末期の長州内部の勢力争いというか、尊王攘夷派と公武合体派が代わる代わる藩政を牛耳っていく辺りが分かりにくいということもあるのでしょう。
そのたびに有為の人材が、切腹していく。
まぁ、それは長州に限ったことではないのですが…。

永井雅楽の「航海遠略策」なんて現在の感覚でいえば優れた政策理論が、攘夷優先派の目の敵とされていく。グローバルな視点を持った政策が、国粋主義的な狂信で否定されていくのは、昭和前期の歴史とダブるような気さえしてきます。
日本という国は、相も変わらず歴史に学ばない国だという気がしてきます。

この「春風伝」の新しさは、「世に棲む日々」と比べて高杉晋作の上海での体験を丁寧に書き込んでいることでしょう。そこで太平天国の乱を自分の目で見ることにより、吉田松陰の"草莽崛起"という教えを身をもって知ったことが「奇兵隊」へと繋げていく原体験として描かれています。"レボリューション"の発見が、この後の高杉を動かしていくことになる。
僕がスッキリとした感じで読めたのも、この辺りなんでしょうね。
西郷隆盛と初めて会う場面での腹の探り合いと比べて、坂本龍馬と初対面から打ち解けてしまうなんてところも面白かった。

ネットで調べてみると、繩田一男はベタ褒めですが、読書メーターの方では好悪拮抗という感じですね。それだけ司馬遼太郎の「世に棲む日々」の影響が未だに大きいということなんでしょうけど…。「世に棲む日々」を再読してみようかな?とも思っています。
前に読んだ時とは、違う発見があるかもしれないので…。
by dairoku126 | 2013-05-13 21:56 | | Comments(0)


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