「恋文の技術」森見登美彦

e0171821_15592376.jpg池波正太郎の書斎の裏から、大量の手紙が発見されたとか。
本人がセレクトして大切に保管しておいたものらしく、家人も存在を知らなかったという貴重なものばかり。恩師・長谷川伸氏からのものとか、川口松太郎などを始め、同じ時期にデビューした司馬遼太郎とのハガキなど…。
その発見を機に「オール読物」5月号で「作家の手紙」のという特集が組まれていたので読んでいたら、書簡文学というジャンルで紹介されていました。森見登美彦のものは、あらかた読んでいるのですが、これは知らなかった。

物語の内容は、例によって京都の大学生の話です。
京都の大学院から、遠く離れた能登半島の実験所に飛ばされた男が一人。
無聊を慰めるべく、文通修業と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。
文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるという、書簡体だけで構成された小説です。
「あとがき」まで著者から読者に向けた書簡体になっている徹底したもの。
文通相手は、同じ京都の大学院に居る同級生、前に家庭教師をしていた小学生、大学で同期だった作家・森見登美彦!、研究室の先輩の大塚女史、大学受験に勤しむ妹などなど。

無駄に高度な知識・教養と、IQの高さを非生産的な方向に発揮する森見文学にしばしば登場するヘタレ大学生の恋の話ですが、一つの章を構成している出されなかった失敗した恋文集は、途中で中断しては反省点を整理してあったりして、なかなか面白い。
京都の大学生の憧れとして、「三嶋亭」の「すき焼き」が登場するのも可笑しいですよね。
なかなかに楽しめる本でした。
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by dairoku126 | 2013-05-10 16:31 | | Comments(0)


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