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ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄

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息子が先日「これ、面白いよ!」と言って貸してくれたのが「ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄ー改訂版 」。読み始めたら、1日ちょっとで読み切ってしまいました。
著者は、中山康樹。2005年に初版として上梓したものに手を入れて、昨年の年末に"改訂版"として再発したものです。
エヴァンスが大好きな僕としては、1970年大学4年の夏休みに初めてアメリカに行った時も、N.Y.のヴィレッジ・ゲートとかヴィレッジ・ヴァンガードで聴けると思っていたのですが、その時にエヴァンスは大阪万博のステージの仕事があって日本に…。入れ違いでした。
初めて生の演奏を聴いたのは、1974年に郵便貯金ホールでのコンサート。
その時は、その前に2日間完徹仕事があり、ビル・エヴァンスの心地よい音色が響いた途端に引き入れられるように眠りに…。それでも夢うつつに耳に響いていました。

この本を読むと、日本やヨーロッパとジャズ事情が著しく違っていたことが分かります。
日本やヨーロッパでは、ピアノ・トリオというのはジャズのジャンルとして確立しているばかりか、ピアニストの価値というのはトリオが基準のようなところがありますが、当時のアメリカではピアノ・トリオというと"カクテルラウンジ"のような扱いを受けていたのですね。
エヴァンスのデビュー盤である「Portrait In Jazz」 の初年度の売り上げ枚数がたった800枚だったとのこと…。ヴィレッジ・ヴァンガードでの仕事が多かったのも、マイルスのバンドなどの対バンドとしてでジャズ・クラブの主役という扱いは望むべくもなかったようです。クラブのオーナーとしては、マイルスなど目玉アーティスト達の休み時間を埋めるにはピアノ・トリオだと3人分のギャラで済むし、ホットになった空気をエヴァンスのような静かなタッチの音楽で冷ますという役割もあったようです。
また「ワルツ・フォー・デビー」のようなライブ盤の録音は、レコード会社にしてもスタジオ費が浮くし、クラブ側としてもギャラの半分はレコード会社が持ってくれるし、大歓迎だったとのこと。実際、「ワルツ・フォー・デビー」は客の入りが一番悪い日曜日を選んで録音したようで、最後には数人の客しか居なかった!!! おい、ホントかよ!? ピアノ・トリオでは、カーネギー・ホールなんて夢のまた夢だったようです。ライブ盤が残っているタウン・ホールなどは、小学生の演奏会などシロートでも使う公会堂のようなハコだったとか…。
だから、しょっちゅうツアーを回ってないと、経済的なダメージが直撃したのでしょうね。
とにかく、ツアーの連続で、精神的にも肉体的にも参ってしまう→ドラッグにはまる→金が足りない→またツアー→またドラッグ→金が…という悪循環を繰り返して居たのでしょう。
長髪にあごひげというスタイルに変ったのも、「むくみ」を隠すためだったとは…。
エヴァンスを好きな人は、読むと面白いですよ。
彼の周りに居たプロデューサー達と次にレコードを売るためにした企画の話も面白いですし、トリオ以外のレコードが多いことも理解できたし…。
彼が死んでから、彼の存在の大きさに気がついて、アメリカでも彼のレコードが飛ぶように売れ出したのは皮肉なことです。ピアノ・トリオの地位も上がったようですし…。
by dairoku126 | 2011-01-25 15:24 | 音楽 | Comments(4)
Commented by セナママ at 2011-01-25 18:44 x
実は、ジャズ大好きなんです。特に、ピアノトリオが。dairokuさんのブログでいつも、「へ〜」とか「なるほど」と勉強させて頂いていたのですが、このビル・エヴァンスの話にはビックリしました。いつもいつも、ためになるお話(酒席でネタに出来る話と言った方が正確ですが)ありがとうございます。今後も、美味しいネタ!お願いしま〜す。
Commented by dairoku126 at 2011-01-26 09:37
セナママさま
いえいえ、本で読んだ受け売りですから…。
それより、Mr.Iのブログは素晴らしいですね。読んでいて身につまされます。当たり前の話ですが、文章力があるし…。
Commented by Mr.I at 2011-01-26 16:13 x
Mr.Iです。小生のブログをお褒めいただきまして、ほんとに、ほんとに光栄です。これからも気合いを入れてブログります。それからセナママさんのみならず、実はわたしも大のジャズファンで、大人になってからはそうではないのですが、特に高校生の時は、毎月スイングジャーナルを購読し、マニアと言ってもいいぐらいにハマっていました。数年前、ある病院の待合室で読んでいた音楽雑誌の広告で、ビル・エバンスの死の直前のライブCDが出ていることを知ったのですが、結局探したけど未だに入手できていませんし、もう詳細も忘れてしまいました。何か知っている方がいたら教えてください。
Commented by dairoku126 at 2011-01-26 16:50
Mr.Iさま
それは、死の1週間前まで出演していたサンフランシスコのキーストン・コーナーのオーナーが本人には無断で録音していたものですね。日本限定ということでアルファ・レコードから出た「CONSECRATION」という2枚組です。その後、アメリカでも違う選曲で「The Last Waltz」というタイトルでファンタジー・レコードから出たようです。(こっちは持っていません)
公式には、死の3ヶ月前にヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音「ターン・アウト・ザ・スターズ~ファイナル・ヴイレッジ・ヴァンガード・レコーディングス」というのが本人の了解の下に録音されたものです。


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