カテゴリ:本( 185 )

『木もれ陽の街で』諸田玲子

e0171821_10414054.jpg諸田玲子には珍しい現代物。
向田邦子へのオマージュともいえる終戦直後の荻窪に住む家族を中心に描いた物語です。もっとも、うちの奥さんに言わせると昭和26年という終戦後の直ぐの時代は、TVドラマにしても時代考証が入るから「時代物」なのだそうだ。
ほぼ絶版になっているので、AMAZONで古書を買いました。

舞台となっている荻窪は、東京大空襲でも被害にあっておらず戦前からの住宅街と住民が暮らしている街。
与謝野晶子、井伏鱒二などの文化人や学者、軍人などが暮らしていた、ある意味ハイカラな街だったようです。主人公「公子」の家も元陸軍大尉の家だったとかで、サンルームのあるハイカラな佇まい。丸石を組んだ上に生け垣があり、その裏側は築山になっていて庭へとなっている…というのは僕の子供の頃に見た鵠沼の風景とも重なる。

当時のことですから、聖路加看護学校を出て大手商社に勤める主人公「公子」も職場と家を往復する毎日。暗黙のうちに門限も当然のようにあり、夕食は当然のように家族揃って家で食べている。まぁ、とても健全なお嬢さんですね。

その彼女の前に現れたのがデカダンを絵に描いたような画家の青年。
戦前にパリ留学したほどの鎌倉の裕福な坊ちゃんが、戦争で帰国する船で発病し、徴兵にも不合格になり、そのことが負い目になっている。
酒とヒロポンに溺れ、怠惰な生活に明け暮れる彼の生活からは想像もつかないような優しい母子像を描いた絵に魅了された主人公は、初めて家族に嘘をついて彼と付き合うようになる。
この恋愛の行方は、どうなるのか…という興味を抱かせつつも、主人公の周りではさまざまな事件が展開されていく。

この物語を読みながら、ドラマにしたときのキャスティングを考えていました。

「あとがき」で川本三郎は画家の青年は、森雅之が良いと書いていて僕も納得なんですが、さすがに古すぎる。自堕落な生活を送りながら、どこかに品性を感じさせる…なんて俳優は確かに今は居ないけどね。有島武郎の息子だもんな。僕の父とは成城で一緒だったようで、成城学園のOBの絵の展覧会には良く出品されていました。

…閑話休題…

向田邦子のドラマにしても、今の俳優でやるとなると難しいよな。
主人公の親友(お嬢さんで居ながら、最後に大波乱を巻き起こす)には満島ひかりというのは、直ぐに思い浮かんだのですが。
小説に書かれた年齢どおりにすると今の俳優さんは幼すぎるし…。
演技などは別にして、武井咲なんかを主人公にキャスティングしても良いかも。

この小説を読んでいて、何よりも感心したのは言葉遣いです。
この時代の空気感というのを感じるのは、登場する人物が発する言葉が美しいのです。僕もその時代の空気を幼少期とはいえ味わっているというか、周囲の大人たちが使っていた言葉を覚えているからでしょうね。
そもそも、諸田玲子は向田邦子の脚本のノベライズから作家としてデビューしているので、時代の空気感などは深くカラダに馴染んでいたのかもしれませんね。
主人公が初めて感じた激しい恋愛感情を端正な言葉遣いで描いてみせるなんて、諸田玲子というのはタダモノではありません。

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by dairoku126 | 2017-04-08 11:39 | | Comments(0)

『楽園のカンヴァス』原田マハ

e0171821_10383367.jpgこの本は、面白かった。

内容はというと…「ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに篭めた想いとは―。」

直木賞の候補にも上がったようですが、獲得はならず。
辻村深月が選ばれています。
ただ、その回の選評を読んでいても宮部みゆき、浅田次郎、阿刀田高などには強い印象を与えたようです。この選評というのも、審査委員がどこに力点を置いて本を読んでいるのかが分かって面白いものです。

確かに、人物像が深掘りにされてなかったりするところはありますが、とにかく目の付け所が良い。こんな美術品市場をテーマにしたミステリーというのも日本では珍しい。
作者が美術館のキュレーターをやっていた経験が活かされています。
原田宗典の妹だったんですね。

続編を書いて欲しい!と思わせる本でした。

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by dairoku126 | 2017-04-05 10:54 | | Comments(0)

松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶

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江戸俳諧の巨匠といえば、芭蕉、蕪村、一茶。
この3人を取り上げた小説を立て続けに読んだので…。
それも、すべて「老いらくの恋」を取り上げている。

最初に読んだのは、葉室麟『恋しぐれ』。
蕪村の老境での、最後の恋を描いたものです。

俳人として名も定まり、画業でも一目置かれ、平穏な日々を京で過ごす蕪村が祇園の伎女に惚れてしまう。
その一途な思いに友人の上田秋成や円山応挙は呆れ、夜半亭一門の弟子たちは驚き、動揺する…という天明期の京を舞台に繰り広げられる人間模様を描いた短編集。葉室麟の細やかな目配りの効いた文体が、老いらくの淡い恋情を描いています。この本は、数年前に読みました。

e0171821_10142303.jpg諸田玲子『ともえ』は…
大津にある義仲寺、その境内にある巴御前の塚に額ずく一人の尼に、声を掛けたのは旅の途中の松尾芭蕉であった。
そして芭蕉最後の恋が始まるのだった。
その尼・智と芭蕉の淡い恋に、遙か五百年の時空を越えて巴御前と木曾義仲の縁が美しく絡む。
近江と鎌倉を、そして過去と今を往還する純愛ファンタジー。』という言葉に釣られて読んでしまいました。

木曽義仲を芭蕉が慕っていたとは、意外でした。
遺言で墓が義仲寺にあることから、ホントにそうなんでしょうね。
寛永から元禄という時代らしさも、この智月尼の経歴に諸田玲子ならではのフィクションが活きています。

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そして、藤沢周平『一茶』。
芭蕉、蕪村は俳人として一家を築き、門人にも恵まれ、創作に専念できる環境にも居た成功者ですが、一茶は継母との関係で北信濃の村から江戸へ丁稚奉公に出されるという書き出しから、貧との闘いの中から生涯二万句とも言われる創作エネルギーを発揮して独自の俳境に至る苦闘を描いて居ます。

江戸文化の爛熟した宝暦期の江戸。その「粋」に最後までなじめない地方人として描いたのは、鶴岡出身の藤沢周平が自らの体験を重ねているのかもしれません。

素朴な味わいのある一茶の俳句の裏側にあった「顔」。
二六庵の弟子を騙り、遺産横領人として汚点など貧の中でしたたかに生き抜き、故郷に戻ってからも汚名の中で若い嫁との荒淫に明け暮れるなど、親しみやすい句と対照的な顔があぶり出されて面白かった。
今年の1月に読んだ尾崎放哉の生涯ともダブるような一面を持っていたのですね。

奇しくも、大好きな作家たちの文章で江戸俳諧の巨匠たちの物語に出会うとは…。


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by dairoku126 | 2017-03-30 11:27 | | Comments(0)

『濹東綺談』永井荷風

e0171821_15033258.jpg永井荷風の代表作として、あまりにも有名な本ですが、今まで読んだことがなかったのですが…。そもそも、このブログのタイトルの「日乗」といいう言葉は、永井荷風の「断腸亭日乗」で知った言葉なので読まないと悪いかな?なんて手に取りました。

あらすじとしては…
小説「失踪」の構想をねりつつ私娼街玉の井へ調査を兼ねて通っていた大江匡は、娼婦お雪となじむ。彼女の姿に江戸の名残りを感じながら。――二人の交情と別離を随筆風に展開し、その中に滅びゆく東京の風俗への愛着と四季の推移とを、詩人としての資質を十分に発揮して描いた作品。日華事変勃発直前の重苦しい世相への批判や辛辣な諷刺も卓抜で、荷風の復活を決定づけた名作。
…とAMAZONの解説にはありますが、小説とも随筆ともつかない物語。
この小説の舞台となっている「玉の井」の私娼窟というのは、僕らの時代では窺い知れない世界ですが、僕らの大学時代まで残っていた渋谷駅周辺のラブホテル街などを想像しながら読んでいました。「オスカー」というジャズのライブハウスがありました。

鎌倉武鑑にも載っている名家の末裔として、洋行帰りの高級官僚の嫡男として生まれ、小学生から文学に傾倒し、中学時代に吉原に遊び、美術学校を目指すも父に反対され、外国語学校に入学したものの学校は怠け邦題、落語家の弟子になったり、歌舞伎座の狂言作者になったりした。息子の行く末を案じた父は米仏に留学させて実学を学ばせようとしたものの、父の意図に反して文学を学び、帰国してから立て続けに作品を発表した。

その作品が森鴎外の目にとまり、学歴もなしに慶應義塾大学の文学部の主任教授に推薦され、教壇に立つと共に「三田文学」を創刊。早稲田文学と対抗するかのように反自然主義、耽美派の文芸誌としての基礎を作った。
その頃には、父も荷風の生き方を認めざるを得なかったようですね。

私娼窟に足繁く通う男と娼婦の話ながら、猥雑に流れず、飄々とした話が展開されていくのは、こんな素性の良さが反映しているのかもしれません。


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by dairoku126 | 2017-03-28 16:04 | | Comments(0)

2月に読んで、面白かったのは…。

e0171821_09245244.jpg今月は、それほど大量に読書が出来た訳ではありませんが、その中で面白かったのは、まずはこの本。
脳科学者の中野信子の書いた「サイコパス」。
平気で嘘をつき、罪悪感ゼロ!外見は、魅力的で社交的。
他人の痛みや倫理観に「共感性」が希薄で、冷酷そのもの。
そのくせプレゼンテーション能力に長けているし、相手の感情を読み取りコントロールするのは得意。
恐怖や不安、緊張を感じにくく、大舞台でも堂々として見える…等々、サイコパスの特長を挙げていくとトーマス・ハリスの小説「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター教授のような凶悪な犯罪者を思い浮かべるかもしれませんが、むしろ社会の成功者として認識されている人も居る。

サイコパスといわれる人たちのことが脳科学の進歩により、脳のどこが未発達なのか解明していく本です。アメリカでは100人に4人、人類全体では100人に1人の割合で存在するとか。
激烈な競争社会を勝ち抜いて行くには、このような傾向を持った人の方が生き残れる可能性は高いですよね。
だから、大企業の幹部や弁護士など「勝ち組サイコパス」も、かなりの割合で存在するとか。
この本を読んでいて、織田信長とかチェーザレ・ボルジアなどの顔が浮かんできましたが、「勝ち組」の最たるものはスティーブ・ジョブスというのには驚きました。
確かに、プレゼンテーションの巧さは抜群です。

そう思いながら、読んで行くと「あの人は…?」と思い当たるのが何人も居るし…。
マスコミ業界にも多いらしいし。

いや、あっという間に読み終えてしまいました。

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こちらは、谷川俊太郎+和田誠が35年前に上梓した本が文庫化されたもの。「耳かき」「犬」とか「ゼロ」など身近にあるものにまつわる想いを詩人らしい感性で綴った本。
その文章に対して、和田誠がイラストをつけている。
この両人に共通した身の回りのものに対する「やさしさ」を感じさせてくれる仕上がりになっています。

身の回りにある何気ないものから意味を見つけたり、愛着を感じたりと読みながら気持ちがホンワカと温かくなる文章&イラストの共同作業です。中には「和田誠さんが、どんな絵をつけるのか?」というような部分もあり、二人で楽しみながら作った本だということが分かります。

この本だけでなく、このところ読む本に「ちくま文庫」の割合が増えているような気がする。
編集者の趣味(?)というか、セレクションが僕の趣向に合っているのかな?

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by dairoku126 | 2017-02-28 10:15 | | Comments(0)

『泥酔懺悔』平松洋子、室井滋、三浦しをん、西加奈子他

e0171821_11072396.jpg女性作家、エッセイストなど12人のお酒にまつわる話を集めた連作集。いや、面白かった。
それぞれの著者が、酒での失敗談や酒の楽しさを綴っているのですが、それぞれの個性や性格が浮き彫りにされるようなエピソードが詰まっています。
まぁ、誰にでも「酒」に関する失敗談というのはあるとは思いますが、女性ばかりを集めた編集者の「目」に敬意を表します。人選も的確だし、並び方も面白い。

女優・室井滋が最初に貰った賞は演技に対するものではなく、日本酒協会からのものだったなんて不服そうに書いているのも笑える。
僕はそれほど酒に強い方ではないので、泥酔する前に気分が悪くなったり、自分でセーブしてしまうので”懺悔”するような事態に陥ったことはほとんどありません。
あくまでも、ほとんど…ですが(笑)
最近は、どちらかというと泥酔する人の介護に回る方が多く、うかうかと飲んでられないという事情もあるのですよ。

山口瞳の「酒飲みの自己弁護」という名著もありますが、女性たちは「お酒のせいなんです!!」と割り切る傾向が強いようですね。
ま、どっちにせよ酒飲みの話というのは大らかというか、あっけらかんとして居る方が読んでいて気分的にラクだし、楽しい。
ゲラゲラしながら、あっという間に読み終わる本です。


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by dairoku126 | 2017-02-11 11:28 | | Comments(0)

『名曲誕生の謎を紐解くーJazz Standard Analyzeー』矢島秀明

e0171821_15051573.jpgいつの間にか、2月になってしまいました。
今日は節分、明日は立春。
ホントに早いですね。

さて、1月は20冊近い本を読んだのですが、ジャズギター研究会推薦のこの本も含まれています。
タイトルそのままに有名なStandard曲のメロディ、コード進行などを分析しながら、なぜ名曲といわれるようになったかを解説していく。確かにコード進行を見ただけで「なぜ、こっちに…?」と思う曲もあるのですが、コード理論を解説しながら裏コードだとか代理コードなどと解説してあるので、実際にアドリブを行う際には役立ちそうです。少なくとも幾つかの疑問は解けました。

さらに、メロディの作り方にしても歌詞の意味を含めて解析してくれているので、ここに劇的効果を持っていきたかったのだな…という曲全体の理解も深くなります。
興味のある方、どんな曲が解析されているかを知りたい方は、こちらを…。

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by dairoku126 | 2017-02-03 15:22 | | Comments(0)

『海も暮れきる』吉村昭

e0171821_22182082.jpg「咳をしてもひとり」「いれものがない 両手でうける」で有名な漂白の俳人、尾崎放哉の最後の8ヶ月を描いた吉村昭の小説。
一高、東大という栄達のキャリアを歩みながら、酒で身を滅ぼした尾崎が妻とも別れ、肺結核による死への恐れと向き合い、俳句仲間の温情にすがりながら小豆島で過ごした凄絶な生活を描いた渾身の作品です。同じ肺結核に犯され、死を見つめた吉村昭ならではの視点が際立っている。

ひと言で言えば、恵まれたエリートとしての生涯を歩むことも出来たであろうに、酒にのめり込むと人格が変わる破滅型の典型のような生涯です。
読んでいて、人間は死の直前にここまで墜ちることが出来るのかという感慨に襲われました。創作への意欲だけに突き動かされ、素直に感じたままの諸々を俳句として結実させることが出来るのかと驚きもします。同時に、無私というか、かように狂的な境地に到達しないと「咳をしてもひとり」という「言霊」のような言葉を吐けないのかとも思います。

ここでも冷徹なまでに尾崎の生を見つめる吉村昭の視点はぶれないし、感傷に浸ることもありません。まぁ、そこが吉村昭の良さでもあるのですが…。

毎日を不自由なく淡々と過ごしている身としては、言葉に込められた重みを想像するしかないよね…とも思いました。

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by dairoku126 | 2017-01-31 22:56 | | Comments(0)

『戦争の日本近現代史』加藤陽子

e0171821_14204812.jpgそうそう、この本も面白かった。
著者の加藤陽子さんはイデオロギーに囚われずに、丁寧に資料をあたりフラットに読み解いていくので今までに語られてきた歴史とは幾分違う解釈の部分も出てきます。
為政者が国民を戦争に駆り立てるときに、どのような論理で煽るのかもよく分かります。
いわば「大義名分」のある戦争なのか…ということが、どのような戦争でも必要なのですね。

結果が史実として分かっている現在から見ると「なぜ?」とか「そんなこと、冷静に考えれば分かるだろうに…」と思うような苦し紛れの論理でも、世間の熱狂とかメディアによる扇動などに乗せられて戦争への道を国民が選んでしまう…ということが良く分かる。
加藤陽子さんの本は、このブログでも取り上げて来ましたが、この本によって「征韓論」にしても今まで思い違いをしていたことに気づかされました。
現在の高校生の歴史の教科書というのが、どのようになっているのか分かりませんが、新たに発見された資料に基づいた史実に書き直されているのかな?
安倍政権の下、教科書検定制度をフルに使って「南京大虐殺」とかは削除される方向にあるようですが…。
自分の国の歴史をきちんと理解していないのは、マズイんだけどな。

前にも書いたかもしれませんが、自分たちがやったことを簡単に忘れるのは日本人だけのようですから。
キリスト教徒の中では加害者に対して「許さないし、忘れない」、「許すけど、忘れない」、「許すし、忘れることにする」の3段階があるようで、日本が国連に加盟を許されているのも、「許すけど、忘れない」の段階だそうです。
だから、未だに国連の中では日本とドイツは敵国条項により常任理事国にはなれません。

そこら辺を読み違えて、「常任理事国入り」を目指すという日本政府の発表は、国際社会での位置づけがアンタ分かっているの?と言われることを覚悟しているのでしょうか?アフリカ諸国などにカネをばらまいて票を買おうとしているようですが、拒否権を持つ常任理事国(戦勝国)には通用しないと思うんだけどな。


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by dairoku126 | 2017-01-06 14:51 | | Comments(0)

『新・リーダー論』池上彰、佐藤優

e0171821_09255837.jpg昨年の暮れから池上彰・佐藤優が3年続けて出した対談集を読みました。2014年の『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』、2015年『大世界史 現代を生き抜く最強の教科書』、そして2016年『新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス』。
いずれも世界で起きていることを俯瞰しながら語り合っているのですが、領土、民族・資源紛争、金融危機、テロなど世界が直面している問題の根にあるものを探って行きます。
新自由主義により「富の偏在」がグローバルな規模で拡大するのに対応するかのようにウクライナ紛争、イスラム国、中国による南シナ海の埋め立て、アメリカ大統領選挙でのトランプ候補の躍進など時代が逆行させるような動きが加速化している。

どの先進国でも、大衆迎合型のポピュリズムが勢いづいている。

その根には「エリートvs大衆」という構図が世界を席巻していること。

英国EU離脱にしても、米国大統領選での共和党候補トランプの躍進にしても、フィリピンのドゥテルテ大統領誕生にしても、社会の指導者層やエリート層に対する大衆の不満が爆発した結果に現れている。格差が拡大し、階層が固定化し、エリートと国民の間の信頼関係が大きく損なわれてしまったのです。ここから、大衆の間に「強いリーダー」を求めるポピュリズムが生まれる一方で、エリートほど新自由主義的な価値観を当然視して、権力を持ったエリートが、社会全体に対する責任を思う前に、自己利益や自己実現ばかりを優先するナルシシズムに陥っています。さらに、教育格差と経済格差が連鎖することで、「エリートVS大衆」という対立がますます激化しています。その結果として「新しい帝国主義」ともいうべき自国の利益だけを追求する政治が世界を動かす要因となっている。

日本のメディアでは大きく報道されていない事象を取り上げながら、二人で世界情勢を分析していく3年間に渡る対談は実に面白かった。



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by dairoku126 | 2017-01-06 10:05 | | Comments(0)