鎌倉を舞台にした小説。
読むより先にNHKのドラマで見ていたのですが、時々「ありえないだろう?」というほどロケ地が飛ぶ。描かれている地名の位置関係を知っているから、その部分だけとても気になりました。
原作はどうなっているんだろう?と思いつつ読み出しました。
まぁ、ドラマもとても良く出来ていたのですが…。
と、かなり原作に忠実に脚本が書かれていたことが分かりました。
「ありえない…」と思いつつ見ていたところは、ドラマ用にエピソードを書き足していた部分だった。
物語が進むにつれ登場する人物を、ドラマ的な伏線として最初の方から出すために無理を承知で書き足したために生じた「不自然」だったのですね。社会的な問題提起をドラマとして盛り込みたかったのかも…。
小川糸という作家の本は、これで2冊目ですが人間関係の距離感を描くのが実に巧い!
土足で踏み込まず、それでいてちゃんと温もりが感じられる距離感というのを分かっているのですね、この人は。ドラマでは、そこのところが少しベタついたものになっていたり混乱していたから「不自然」だと感じたのかもしれません。
原作の方は、淡々と進んで行く構成になっていて、それでも章を重ねるにつれ徐々に重層的に膨らんでいくのですが、ドラマはそうも行かないもんね。
脚本家も、そこの部分で苦労したんだろうな。
人間が生きていく上で抱える問題を描いていくのに、「代書屋」という江戸時代から続く「商売」を切り口にしたところが新しさを感じさせてくれるのでしょうね。
僕が居た会社では広告制作のポイントとして「大胆な切り口、明快なアート、緻密な仕上げ」という「制作三原則」というのを叩き込まれましたが、この本を読みながらそんなことを想い出していました。
ただ、先に
ドラマを見てしまうと読んでいて登場人物の顔がタレントの顔にダブってしまう。
なかなか、素敵なキャスティングだったから構わないのですが…。
多部未華子、大好きだし(笑)