『陰翳礼賛』谷崎潤一郎

e0171821_12494606.jpg本の題名は、もちろん知っていたけど読むのは初めて。
昭和8年に書かれたということを知らずに読むと、何を言ってるんだか…?と思うでしょうね。
昭和30年代以降に生まれた人は、想像すら覚束ないのでは。
何しろ83年も前に書かれたものですから…。
まだ、江戸の名残が社会に残っている頃ですからね。

谷崎潤一郎の美学というものが、良く分かりますね。
確かに、日本伝統の「美」というものは、西洋のそれと違い「陰翳」というものが大きく影響するのでしょう。

思わず”納得!”と思ったのが歌舞伎の衣装の派手やかなことと、女形のどうしようも無さ。
電灯が発明される前のライティングを元に計算された衣装や女形という役割は、バカ明るい現在の舞台の上では軽薄なものに見えてしまうのですよね。外国人は、あの派手さが好きなようですけど…。
それと漆器や蒔絵も、暗い中に置くと映えるというのも分かります。

僕らのように戦後間もない生まれだと、子供の頃に「闇」というものを経験しています。
確かに街頭も電球だったけど、電柱の下に丸い光を生むだけ。周りには「闇」が広がっていました。だから、月光の明るさというのも知っています。
この月光の明るさは、70年代初期までは田舎に行けば味わえた。

初めて新島に行った1968年の時などは、満月の夜に松林を抜けて海岸に行くと、松の陰が道にクッキリと印されていたり、まったく照明の無い砂浜で人の顔がクッキリ見えたもんね。伊豆の白浜に波乗りをしに行くときも、満月の深夜に伊豆半島の照明の無い道を走っているときはヘッドライトに頼らなくても見えるほど、月の光の明るさというものは明るかった。

僕もどちらかというと照明は、薄暗い方が好きです。
この「陰翳礼賛」以外にも「恋愛及び色情」、「客ぎらい」など6篇が納められているけど「厠のいろいろ」が実に面白かった。これまた、水洗の洋式便所しか知らない人には想像も出来ない世界でしょうね。
吉行淳之介の<解説>も、素晴らしい。



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by dairoku126 | 2017-05-17 13:26 | | Comments(0)


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