昨年の暮れから池上彰・佐藤優が3年続けて出した対談集を読みました。2014年の『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』、2015年『大世界史 現代を生き抜く最強の教科書』、そして2016年『新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス』。
いずれも世界で起きていることを俯瞰しながら語り合っているのですが、領土、民族・資源紛争、金融危機、テロなど世界が直面している問題の根にあるものを探って行きます。
新自由主義により「富の偏在」がグローバルな規模で拡大するのに対応するかのようにウクライナ紛争、イスラム国、中国による南シナ海の埋め立て、アメリカ大統領選挙でのトランプ候補の躍進など時代が逆行させるような動きが加速化している。
どの先進国でも、大衆迎合型のポピュリズムが勢いづいている。
その根には「エリートvs大衆」という構図が世界を席巻していること。
英国EU離脱にしても、米国大統領選での共和党候補トランプの躍進にしても、フィリピンのドゥテルテ大統領誕生にしても、社会の指導者層やエリート層に対する大衆の不満が爆発した結果に現れている。格差が拡大し、階層が固定化し、エリートと国民の間の信頼関係が大きく損なわれてしまったのです。ここから、大衆の間に「強いリーダー」を求めるポピュリズムが生まれる一方で、エリートほど新自由主義的な価値観を当然視して、権力を持ったエリートが、社会全体に対する責任を思う前に、自己利益や自己実現ばかりを優先するナルシシズムに陥っています。さらに、教育格差と経済格差が連鎖することで、「エリートVS大衆」という対立がますます激化しています。その結果として「新しい帝国主義」ともいうべき自国の利益だけを追求する政治が世界を動かす要因となっている。
日本のメディアでは大きく報道されていない事象を取り上げながら、二人で世界情勢を分析していく3年間に渡る対談は実に面白かった。