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映画『ブルーに生まれついて』


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チェット・ベイカーを描いた映画ですが、ジャズマンを描いた映画ってドラッグとの闘いになってしまうんですよね。どうしても…。
チャーリー・パーカーを描いたクリント・イーストウッド監督の「バード」とか、ベルトラン・テベルニェ監督の「ラウンド・ミッドナイト」とか。
そして、カルバン・クラインの広告で有名になった写真家・ブルース・ウェーバーが撮影したチェット・ベイカー本人が出演した自伝的ドキュメント映画「Let's Get Lost」も良かった。

ジャズ界のジェームス・ディーンと呼ばれたチェット・ベイカーは、僕も大好きで良く聴いていたので、この映画が上映されると知ったときから必ず見ようと思っていました。
チラシで見た限り主演男優のイーサン・ホークは、確かにチェット・ベイカーの雰囲気を漂わせていたし…。
Bunkamuraのル・シネマに着くと、待合室にはジャズ大好きという風情の爺さんが多い。
まぁ、人のことは言えませんけど(笑)
前の上映が終わって劇場から出てきた中に代官山レザールで知り合った後輩シライシ君も…。
声をかけたら「会社サボってきたので内緒にお願いします」と言われてしまった。
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まぁ、観ての感想ですが、上記に上げた映画よりは、ちょっとね…という感じです。
深く感動するという映画では無かった。

確かに当時の時代感は良く描いてあるし、チェットのレコード・ジャケットにあった写真を再現したような構図とか映像そのものは美しい。
パシフィック・ジャズ・レコードの社長でチェットを支えて来たディック・ボックの家やスタジオなどは、いかにも西海岸という雰囲気です。
イーサン・ホーク自身がトランペットとヴォーカルの特訓を受けて、チェットのように歌ったり、トランペットを吹いたりするのですが、そこにチェット本人の「味」が欠けてしまっているからなのかもしれない。だから、演奏シーンもワンコーラスで終わってしまい、チェットの音楽に浸りきるところまで行かないからかもしれない。なんか、尻切れトンボのような感じ。
もっとも、チェットをそれほど聴いてない人だったら良い感じに受け止めると思いますよ。
それくらいイーサン・ホークの歌唱もラッパも良い感じに仕上げているから…。

共演した女優カルメン・イジョゴは素晴らしかったけどね。とても、良い女優さんです。
ただ、このチェットを支えてカムバックさせるジェーンという女性そのものが、フィクションだしなぁ。

マイルス・ディヴィスとかディジー・ガレスピー役の俳優さんがよく似ている。
でも、チェットはどれだけ人気があっても、レコードが売れても、この二人を超えられないというという葛藤があったのでしょうね。白人というだけで、N.Y.のジャズ・シーンでは常に劣等感に苛まれるほどのジャズ界の逆人種差別があったようだし。
全編を通して、鳴り物入りで出演した最初のバードランドでマイルスにコケにされたトラウマがクスリに走らせ、せっかく更生したと思ったら、カムバック後にディジーが奔走して実現したバードランドで、再び二人を前に演奏する時に耐えきれずにクスリをやってしまうというところで終わります。彼の演奏を聴きながらクスリをやったことを直感したジェーンが消え去るラストシーンが印象的でしたね。






by dairoku126 | 2016-11-29 11:46 | 文化 | Comments(0)


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