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「柚子の花咲く」葉室 麟

「柚子の花咲く」葉室 麟_e0171821_11242498.jpg「桃栗3年、柿8年」というのは子供の頃から知っていましたが、その続きがあったとは知りませんでした。本書では「柚子は9年で花が咲く、梨の大馬鹿18年」と続きます。

故事ことわざ辞典によれば『果樹を植えたら、その実がなるまでに相応の歳月を待たねばならないことから、何事も成就するまでにそれ相応の年月がかかるということ。
「桃栗三年柿八年」の後に、「梅は酸いとて十三年」「柚子は九年でなりかかる」「柚子は九年の花盛り」「柚子の大馬鹿十八年」「枇杷は九年でなりかねる」などと続けてもいう。
『尾張(大阪)いろはかるた』の一つ』とあります。

このタイトルが示すように、隣藩で斬られた恩師殺害の真相を探るべく若き日坂藩士・筒井恭平は隣藩への決死の潜入を試み、知らなかった恩師の過去に触れ、人を愛すること、人が成長するということなど、人間にとって大事なものを教えてくれた恩師の教育が、気付かぬうちに自分の中で発酵していたことを自覚するようになっていきます。
まさに「柚子は9年で…」という物語。

葉室作品の特長でもあるのですが、登場する女性達が良いんです。
さなえ、およう、琴…それぞれの女性達が凜として、自分の道を歩んでいる。

恩師の許嫁であった さなえが恩師から諭された『自分を嫌うことは、自分を大切に思ってくれる人の心を大事にしないことになる』なんて実に良い言葉です。

直木賞受賞前の作品ですが、実に瑞々しい感性に溢れていて、読後感が清々しい。
年末から読み始め、正月早々に読み終えましたが、新しい一年が良い年になりそうな気持ちにさせてくれました。
by dairoku126 | 2014-01-04 12:03 | | Comments(0)


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