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葉室 麟

葉室 麟_e0171821_1472537.jpgいや、久しぶりに「これは…!」と思える作家に巡り会うことが出来ました。すっかり、ハマりました。
2012年上半期の直木賞を受賞した葉室麟です。
こんな興奮を覚えたのは、隆 慶一郎以来のことです。

丸善に「直木賞受賞作家」というコーナーがあったので、試しにデビュー作「乾山晩愁」の文庫本を買って読んでみたら、デビュー作と思えぬほどのしっかりとした筆力と構成に驚きました。尾形乾山、狩野永徳、長谷川等伯、清原幸信、英一蝶の5人の画家を題材にした短編ですが、前編の余韻が燻るように次の物語に影を落としながら、また新たな物語を展開していくという構成の妙に驚かされました。
それぞれの作品は、出光美術館などで知っていたことだし…。
続いて、架空の藩を舞台にした時代小説「銀漢の賦」、秋月藩に題材を採った「秋月記」、鎌倉三代将軍の暗殺をめぐり実朝の首の所在と事件の顛末を描いた小説「実朝の首」、小城鍋島藩と水戸徳川家がからむ「いのちなりけり」と立て続けに文庫化されたもの5冊を、1週間で読んでしまいました。
もう堪りません。
第146回直木賞受賞作「蜩ノ記」を有隣堂で手にとるなり、レジに向かってしまいました。
処女作の「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞。「銀漢の賦」で第14回松本清張賞受賞。
「いのちなりけり」、「秋月記」、「花や散るらん」、「恋しぐれ」で直木賞候補に4度も選ばれ、「蜩ノ記」でやっと直木賞受賞となった訳ですが、最初に候補に挙がった「いのちなりけり」で受賞していても不思議はなかったと思える出来映えです。

藤沢周平の後継者が出てきたと思えるほど、文章も清冽だし、読後感が涼やかなところも似ているような気もします。正統的な、時代小説作家が誕生していたんですね。

江戸時代の武士の教養として重んじられた漢詩や和歌が物語の伏線として重要な役割をするのも、時代小説ブームといわれる中で他と一線を画す重厚さを与えているし、主人公のキャラクター設定がしっかりとしている要因でもあるのですよね。
「いのちなりけり」を読んでいて、隆慶一郎が「葉隠」を題材に書いた「死ぬことと見つけたり」の主人公の斉藤杢之助を思い出していたら、最後にちょっとした仕掛けがありました。

北九州・小倉出身だからなのか、作品の舞台が秋月とか佐賀とか豊後など九州が多いため、風景が目に浮かぶからかもしれません。
秋月なんて福岡時代に出かけて城跡を見て歩いたりしましたから…。
by dairoku126 | 2012-03-14 15:10 | | Comments(17)
Commented by ひろ at 2012-09-04 17:40 x
ハムリンの最新作「千鳥舞う」を読破しました。博多の女絵師が「博多八景」を描く過程を通して男女の心の琴線に触れる表現で哀切さを感じさせます。「濡れ衣を着せる」の語源となった故事が博多にあるなどガイドブック的な要素もあり西南学院大学から社会人を過ごした博多への想いも感じさせます。
Commented by dairoku126 at 2012-09-07 09:45
ひろさま
僕は、福岡に転勤していたことがあるので葉室麟の小説に出て来る地名などに懐かしさを感じたり、もう一度行きたい!などと思うこともファンとなった一つの要因かと…。
「千鳥舞う」は、早速に読んで見ます。
Commented by ひろ at 2012-09-10 16:59 x
福岡に勤務されていたならハムリン作品には「秋月記」の秋月の他福岡県柳川の「無双の花」、大分県日田の「霖雨」もあります。
Commented by dairoku126 at 2012-09-10 23:15
ひろさま
はい、それらは読みました。
秋月、柳川、日田、すべて町を歩いたことがあるので、読んでいて「あ、あそこのことだな」など楽しく読むことが出来ました。
Commented by ひろ at 2013-08-03 19:48 x
映画「蜩ノ記」がクランクアップしました。秋谷の屋敷は岩手・遠野、慶仙和尚が住職を務めた長休寺は日本三景松島の円通院、庄三郎と薫が夜祭に出かけた向山神社は喜多方市の新宮熊野神社、物語のクライマックス、秋谷が中根家老の屋敷に庄三郎と郁太郎を助けに乗り込むシーンは会津若松の豪壮な武家屋敷でロケされました。戸田秋谷ー役所広司、庄三郎ー岡田准一、薫ー堀北真希、織江ー原田美枝子、松吟尼ー寺島しのぶ、2014年 公開予定。小泉監督が黒澤明直伝の撮影を敢行、張り詰めた現場から素晴らしい映画誕生の予感がします。
Commented by dairoku126 at 2013-08-04 13:01
ひろさま
情報、ありがとうございます。
配役を見ても、ロケ地をみても楽しみな映画になりそうですね。
Commented by ひろ at 2014-01-10 16:05 x
映画「蜩ノ記」の公開日が2014年10月4日に決まりました。
まだ先なので健康に留意してバスタオル持参で観に行きます。
Commented by ひろ at 2014-06-20 09:22 x
映画「蜩ノ記」公式サイトで予告編を観ることが出来ます。
期待が持てそうです。
Commented by dairoku126 at 2014-06-20 12:42
ひろさま
ありがとうございます。早速、見てみます。
Commented by ひろ at 2014-09-08 13:24 x
「Eね!蜩ノ記」を検索すると完成報告会見の動画を観ることができます。
役所、岡田、堀北、原田にまじり居心地が悪そうなハムリン先生も発言されます。
Commented by dairoku126 at 2014-09-09 12:47
ひろさま
ありがとうございます。
いよいよ来月公開ですね。
Commented by ひろ at 2014-09-26 15:13 x
「蜩ノ記」を遂に観ました。

この試写会は西南学院大学の主催でしたので上映前に大学OBの原作者葉室麟さんのトークショウがありました
映画化について「小泉監督が久留米までお出でになり映画化の話をうかがいました。大学生のとき、映画研究部だった自分にとって黒澤監督のDNAを引き継ぐ小泉監督も存知あげていたのでお任せしました」この時点で「蜩ノ記」は原作者を離れ映画の脚本家の手に移るようです。原作では柚子は出てきませんが映画では「柚子は九年で花が咲く」というセリフがあります。これは先生が人生への感慨を語るときに引用される「桃栗三年柿八年、柚子は九年で花が咲く」を小泉監督も知っておられ映画に引用されたようです。売れるかどうか分からない作家デビューして九年「まさにこの映画は私にとって九年かけて咲いた柚子の花のようなもの、堀北さんのセリフを聞いた時は胸にグッと込み上げるものがあった」と語られました。
司会者の「好きな女優さんは?」の質問に六十歳を過ぎた売れっ子作家は少年の顔になり小さな声で「堀北真希さん」
最後に「この映画は親や友達、ひとには大切にするものがることを伝えてくれています」と締めくくられました。
Commented by dairoku126 at 2014-09-27 17:49
ひろさま
羨ましい限りです。
一般公開まで、あと僅か。ワクワクしてきました。
Commented by ひろ at 2014-10-23 09:31 x
またまたハムリン作品が映像化されます。
NHK総合テレビ木曜時代劇「風の峠~銀漢の賦~」2015年1月15日20時から連続6回放送、出演は中村雅俊、柴田強兵、桜庭ななみ、中村獅童、吉田羊他 楽しみです。
Commented by dairoku126 at 2014-10-23 13:12
ひろさま
今度は「銀漢の賦」ですか。
松浦将監役が中村雅俊でしょうね。楽しみです。
Commented by ひろ at 2014-12-25 16:08 x
NHK木曜時代劇「風の峠~銀漢の賦」の番組HPが出来ました。
松浦将監役は柴田恭兵で中村雅俊は日下部源五役です。
来月15日が第一回、楽しみです。
Commented by dairoku126 at 2014-12-26 15:45
ひろさま
これですね。
→http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/ginkan/index.html

楽しみですね。


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