絵に描かれた男性も、女性も裸で居ることが当たり前のように気にしていません。 この「裸はいつから…」という本は、ノンフィクションライター・中野明氏が上の図を見て、混浴の歴史を書こうと思い、次第に日本人の裸体観の方に興味が移って、幕末から150年の間に日本人の羞恥心がどのように変化し、また性的な関心がどのように変化してきたかをまとめたもの。なかなかの力作です。 この本によると、江戸の町などでは混浴禁止令などが出ていたようですが、基本的には幕末までは裸体というのは性的対象として捉えられてなかったようなんですね。 だから、日本を訪れた外国人が江戸の町などを散歩していると、家の前の往来にタライを持ち出して、平気で真っ裸で行水を使う女性などを見かけたようです。 また、箱根などに遊びに行ったときに若い娘たちを見かけて、話しかけようとすると恥ずかしがって逃げていってしまうのに、温泉の中で会うとニッコリと親しげに笑いかけてきたりするのにビックリしたようです。彼らにとって、裸で会うことの方が恥ずかしいと思うのも当然ですが…。 我々だって、ビックリしちゃいますよ。 この幕末に来た人たちの中には、宣教師やキリスト教の信仰で凝り固まった外交官など(アメリカ人に多かったようです)が多く、出来たての明治政府に「これは文明国の姿ではない」と強行に抗議したようです。また、洋行帰りの新政府のリーダーたちも「早く文明国にならないと、条約改正もできない」と西洋的な価値体系を取り入れるのに熱心でしたから、とにかく裸で町を歩くことは罷り成らん!ということになって、行政指導を行ったようですね。 裸を隠すようになると、今度は見られることが恥ずかしくなったり、また性的な関心の対象となったりするんですね。意識の変化が起きてくる。 美術の世界でも、裸の彫刻などには布をかけたりするようになったり、と芸術論争が起きたりするようになってくる。 明治を過ぎ、大正・昭和(戦前・戦後)と時代が変化する中で、日本人の意識の変化を「混浴」という視点から捉えた面白い風俗史だと思います。 思い起こせば、僕が子供の頃にも鵠沼海岸の町の銭湯の前を通りかかると、お婆さんが裸同然の姿で闊歩していたり、電車の中でも母乳を平然と与えている若いお母さんなどを見かけた覚えがあります。やはり、鵠沼は田舎だったんだなぁ…。
by dairoku126
| 2011-07-01 16:04
| 本
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Comments(2)
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by
matsu-honu
at 2011-07-02 14:47
x
街を下着姿でなんか絶対歩かないのに、海水浴場では公衆の面前で堂々とビキニ姿でいられる人が不思議でなりませんでした。
みんな同じならば平気ということでしょうが、混浴の温泉でも海水浴場でも日本人が昔から持っていた何か大切なものが、そこにあるのかも知れませんね。
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by
dairoku126 at 2011-07-03 13:54
matsu-honuさま
この本は、なかなか面白いですよ。 そういえば、バブルの後に下着のようなコスチュームの女性ロックバンドが流行ったことがありましたよね。 それと、温泉だけは未だに国が混浴禁止のお達しを出してないそうです。 伝統なのでしょうか?
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